内容説明
信州の山奥に住む農民文学賞作家・鶴岡一生が描く幻視の異空間。「これが小説の描写というものだ」と論評された卓越した描写力と、日本文学の伝統を受け継ぐ深い余韻…。夢と現が交錯する中に、四季の移ろいと日本の原風景が甦る。「春」「夏」「秋」「冬」「無季」各二五編を収録。
目次
春(春眠;滴る ほか)
夏(花火;金輪際 ほか)
秋(栗鼠;月の夜 ほか)
冬(凍雪;薄氷 ほか)
無季(邪気;悪戯 ほか)
著者等紹介
鶴岡一生[ツルオカイッセイ]
1967年大阪府八尾市生まれ。大阪府立八尾高等学校卒業。早稲田大学社会科学部中退。東京では、さまざまな職種で働きながら自主映画を製作・監督。2006年長野県上田市の標高一〇〇〇メートル近い山奥に家族とともに移住。炭焼きや農業に従事しながら地元紙にルポや対談、掌編小説を発表。2010年「曼珠沙華」で農民文学賞を受賞。翌年短編集「曼珠沙華」をほおずき書籍から刊行。2012年炭焼きの山仕事中の事故で左目を失明(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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晴
3
面白かったなー。偶然に手にして気になり購入した一冊。すごくいい本だった。掌編ってなんだかお得感もあって好きなんだよな。色んな物語をいっぱい聞かせてもらいました。自分も信州の山奥に住んでいたこともあってなんとなく風景を想像しながら読むことができてより楽しめたんだと思う。何度でも手に取って読みたくなりそうな一冊。別の作品もいつか読むぞ。2020/12/26
氷沼
0
四季と無季の五章に分けられた、全編2ページで完結する薄っすらと幻想的な掌編集。どの話も背景に迫る自然が感じられ、色彩が感じられるような文章それ自体も見事。下調べも何もせず書店にて何気なく手に取った一冊だったが、これは当たりだった2016/07/08
マルチーズ署長
0
見開き2ページの掌編小説。春夏秋冬、無季に分類されている。表紙は闇に舞う蛍。春に分類された「化生」「山葵」「雨後」が良かった。川のほとりで近所のものが狐に化かされたらしいと話し笑うじいさんもまた得体が知れない。山葵がほかの植物を寄せ付けない成分を出しているせいで自分も成長できないでいる と知ったひとり旅の女子は自分の殻を破ろうと決める。雨上がりにゴムまりのように跳ねる子供と犬のシルエットを見る父親。自然と共に生きていることになんだか感謝したくなる。2024/09/21
tsubaki
0
見開き2ページで完結する短編集。 とにかく自然の描写が美しく見事。山奥で生まれ育った私は、忘れていた山肌を霧が滑り降りてくる様子や香り、春めいて来た日に氷を割った手応えを思い出した。 キリッとした山々と、そこに暮らす人々と、共存する動物たちが派手さはないのにとても美しい。 これは手元に置きたい。 2018/12/24
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