内容説明
早稲田大学の「近代建築史」講義をまるごと実況中継!ブルネレスキから藤森照信まで、近代500年の建築史を全12回で駆け抜ける!
目次
1 西洋近代―ルネサンスから産業革命へ(時間の宙づりとルネサンス;マニエリスムからバロックへ;新古典主義と知性の暴発 ほか)
2 モダニズムの極北―20世紀芸術運動と建築(基準・空間・構築―ミース・ファン・デル・ローエ;構成・速度・時間―アドルフ・ロース/ル・コルビュジエ;ランダムネス・革命・宇宙―未来派/ロシア構成主義/バックミンスター・フラー)
3 近代+日本+建築(白いくりがた―様式的自由と擬洋風建築;空白のメダイヨン―明治建築の成熟と崩壊;平和の発明―丹下健三について ほか)
著者等紹介
中谷礼仁[ナカタニノリヒト]
早稲田大学教授。建築史家、歴史工学家。1965年生まれ。2010‐2011年日本建築学会『建築雑誌』編集委員会委員長。2013年度日本生活学会今和次郎賞、2013年日本建築学会著作賞受賞ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
73
私の素朴な理解によれば、ルネサンスが見る人の位置を定めたのに対し、マニエリスムは見る人を時間の中に、またバロックは予測不能の(多焦点的な)楕円運動の中に放り出したのである(それとケプラーの惑星理論や列強の植民都市建設が繋がるのには驚くけれど)。新古典主義が革命に通じる話も目から鱗で、真円に象られた《ショーの製塩工場》はなるほど理性の前に白紙化された建築だろう。さらにモダニズムを、諸様式を並立させる世界基準の具体化と定義した上で、個々の作品解読(例えばル・コルビュジエのキュビズムやメゾネット)が有益だった。2018/11/29
chang_ume
4
読者の間口を広げてくれる本との出会いは幸せです。まさしくそんな一冊。「人間の器」としての建築について、いわば様式を〈事象〉と捉える視点からの建築史論(まさに「史論」と呼ぶにふさわしい)。近代の出発点であり原点でもあるルネサンスを皮切りに、新古典主義の閉塞を経て、モダニズムの世界的爆発を見る。その到達点としての「丹下健三」理解には深く頷きました。なぜ彼の作品があれほどまでに心打つのか。そして近代のいわば解法としてのポストモダニズム解説も明快。安藤忠雄・藤森照信・伊東豊雄などの旗手を畳み掛けるように。2018/04/27
55くまごろう
3
建築という学問は難しい。単なる工学の一つのようだが、芸術でもあり思想でもあるという複雑な代物だ。建築史ともなれば、時代を代表する思想が次々と何かを問いかけてくるのだから、正直自分には手が負えないと判った。本書も字面を追うのが精一杯で、正直理解したとは到底言えない。でもこうして立ちはだかるものに正面から向き合うのは、一種の快感でもある。この次は何を手に取ろうか。2018/04/30
ikeikeikea
3
早稲田大学で行われた「近代建築史」講義をもとにした一冊。1.ルネサンスから産業革命、 2.モダニズム建築の誕生と発展、3.近代+日本+建築の3部に分かれている。200ページ程度の著作なのにこれだけ詰まっているのである程度の前提知識がないとついていくのが難しいかもしれない。第3部が最も面白いので明治時代好きにオススメ。ただ歴史関係では疑問符がつく記述も多い。例えば「議事堂のジグラッドは、古代エジプトの墓であるマウソレウムの形式を様式として採用」といった記述だ。マウソレウムがあったのはハリカルナッソスだろう。2018/04/03
Kyo-to-read
2
近代建築を俯瞰的に掴める本を探して見つけた一冊。期待通り、ルネッサンスからポストモダニズム建築までの流れが分かり易く解説されており、建築の流れを押さえるフレームワークが自分の中にできた気がする。時代毎の解説は基本的にはさらっと流れていくので、読み易いものの、物足りなさもある。例えば近代のところはもう少し詳しく書いてくれても良かったと思う。ただし著者本人も本書で書いている通り、本書には著者による生の思考がふんだんに盛り込まれており、読者自身も建築に向き合う姿勢のヒントが得られるのが本書最大の利点だと思う。2020/04/11