感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
古代インドの文献学者である著者は、学問と研究の間の矛盾と対峙し続けた。学問は古代インドを現在と隔絶した過去の遺物として対象化する。その学問は、多く仏教資料に基づき、仏教徒がわずかしかいない現代インドとの隔たりや漢訳からさらに多言語訳されて多様な解釈を展開する原始仏典・遺跡・碑文に、その古層を見出す探求となる。一方、仏典は自己の探求のために書かれたはずだ。が、学問は文献から当のテーマを消し去った。それゆえ著者は学問に今を生きる自己の探求という面を導入し、「勉強」なる語を「自ら勉め強いる」という意味に変える。2021/04/01
うちこ
2
生誕100年のときに復刊された、もとは1986年の本です。研究や翻訳に対するさまざまな思いやエピソードが綴られています。 「才能ある人は別であるが、そうではない人は自ら勉め強いることなしには道を切り開いていけないのではないか」(P95)など、凡人に喝を入れる言葉も。「勉強になります」ってへんな表現なんですよね。勉強します、としか言いようがないこの感じがたまりません。 受け取る気満々なだけの態度にきびしい考えを持ちつつ、でも読む人に向けて微細なレベルで浸透圧を計算し、平易さを追求する。すごい先生だわ。2016/07/23