内容説明
わが国の考古学の分野では、1980年代頃から近現代という「新しい時代」の遺跡が次第に発掘調査の対象となってきた。そして、近現代考古学の登場によって考古学は限りなく現在に接近することになったが、そのことは聞き取り調査が可能な時代、あるいは研究者自らが経験した時代が考古学の研究対象になったことを意味している。本書は「新しい時代」の考古学や遺跡と現代社会の関係に興味を抱く著者が以前に発表した論考をまとめたものである。ここには遺跡の発掘資料によって判明したわが国の近代の生活やライフスタイル、戦後の高度経済成長期の消費生活についての論考、さらには遺跡と現代社会との関係を探る手がかりとなる全国各地に存在する遺跡や遺物をモチーフとした造形物や遺跡を舞台とした地域イベントである「遺跡まつり」の事例を紹介し、考察を加えた論考が含まれている。本書では現在につながる「新しい時代」の考古学の必要性や面白さを伝えるとともに、遺跡や遺物を埋蔵文化財として捉えるだけでなく現代社会の中で様々な形で流用されることによって、遺跡や遺物が新たな社会性を獲得し、流行現象の発信源となる可能性を論じている。
目次
第1章 発掘された日本の近現代生活(高度経済成長期の消費生活;発掘資料から近現代のライフスタイルを探る;近現代貝塚の発掘;近代食器の使用痕分析)
第2章 現代社会の中の遺物と民具(考古系造形物の世界;民具と現代社会)
第3章 遺跡まつりにみる遺跡の活用(消費される遺跡、継承される遺跡;遺跡まつりと地域アイデンティティ;遺跡まつりの新展開)
著者等紹介
櫻井準也[サクライジュンヤ]
1958年新潟県生まれ。1988年慶應義塾大学文学研究科後期博士課程修了(史学博士)。慶應義塾藤沢校地埋蔵文化財調査室勤務、慶應義塾大学文学部非常勤講師、助教授を経て現在、尚美学園大学総合政策学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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