日本語オペラの誕生―鴎外・逍遙から浅草オペラまで

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  • サイズ A5判/ページ数 544p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784864051316
  • NDC分類 766.1
  • Cコード C1074

出版社内容情報

20世紀初頭、日本人はオペラをいかに理解/誤解していったのか。試行錯誤から誕生した「日本語オペラ」の実態を明らかにする。オペラ移入の夢と現実
ヴァーグナーへの憧れに突き動かされて、日本でオペラの試演が始まったのは20世紀初頭のこと。歌舞伎や能を見慣れた当時の日本人は、オペラをどのように理解/誤解し、自分たちの表現を見つけていったのか。オペラへの野心が感じられる?外・逍遙の戯曲から、帝劇歌劇部を経て、お伽歌劇や浅草オペラに至るまで――。試行錯誤の中から誕生した和洋折衷の「日本語オペラ」の実態を、台本の精読をとおして明らかにする。

はじめに──問題の設定
[第一部 物語る声は誰のものか──東西の戯曲形式の狭間で]
 第一章 オペラが目指されなかった時代──演劇改良論から新劇運動まで
  第一節 オペラ劇場への憧れと、オペラ待望論の欠如──演劇改良論
  第二節 独白表現と「チョボ」の呪縛──『ハムレット』をめぐって
 第二章 二つの浦島劇──森?外『玉篋両浦嶼』と坪内逍遙『新曲浦島』
  第一節 ヴァーグナー・ブームとオペラ待望論
  第二節 「白を主とする劇」──『玉篋両浦嶼』
  第三節 「振事」を基礎とする「新国劇」──坪内逍遙『新曲浦島』
 第三章 オペラと歌舞伎と「叙事唱歌」の距離──北村季晴『露営の夢』
  第一節 音楽劇『露営の夢』の成立まで
  第二節 歌舞伎座における上演の実態
  第三節 歌唱者の振り分け──義太夫節の歌舞伎化との対照において

[第二部 音楽劇は何を物語るべきか、何を物語れるのか]
 第四章 日本人による初期の歌劇上演
  第一節 東京音楽学校『オルフォイス』
  第二節 楽苑会の創作および翻訳歌劇上演
  第三節 前期文藝協会の上演した逍遙の音楽劇作品
  第四節 山田耕作『誓の星』
 第五章 帝国劇場の試行錯誤
  第一節 帝国劇場の誕生──新時代の理想と伝統の継承
  第二節 第二節 女優と歌手、バレエとオペラ──帝国劇場歌劇部の発足と『胡蝶の舞』
  第三節 日本的題材の採用の是非──『熊野』
  第四節 劇評界の示した二つの方向──『釈迦』
  第五節 「常磐津のオペラ」という反動──『江口の君』
  第六節 その他の歌劇関連の演目
 第六章 帝劇歌劇部の達成したもの
  第一節 ローシー指揮下の洋楽音楽劇の展開
  第二節 小林愛雄の翻訳喜歌劇台本──『ボッカチオ』を例に
  第三節 帝劇洋劇部の解散以降

[第三部 歌とセリフは、それぞれ何を物語るのか]
 第七章 実験の場としての「お伽歌劇」
  第一節 歌とセリフのすみ分け──北村季晴『ドンブラコ』
  第二節 音楽の挿入を目的とする劇──本居長世『うかれ達磨』
  第三節 『ドンブラコ』『うかれ達磨』から見えてくるもの
 第八章 レコードになったお伽歌劇
  第一節 佐々紅華の仕事
  第二節 語り物の系譜に連なる音楽劇──『ウントコ爺さん』
  第三節 日本的な節回しの呪縛──『ウサ??兎』
  第四節 浅草での仕事ぶりを予感させる作品──『目なし達磨』
  第五節 口語散文の自在な歌唱──『茶目子の一日』
  第六節 「文句集」における歌とセリフの位置付け──「むすびに」に代えて
 第九章 浅草オペラ──観客の支持した新しい音楽劇
  第一節 浅草オペラとはどのようなものであったか──先行研究をもとに
  第二節 帝劇時代の翻訳台本からの逸脱──再び『ボッカチオ』を例に
  第三節 替え歌オペラ──伊庭孝『女軍出征』、佐々紅華『カフェーの夜』
  第四節 「本格」オペラ上演への憧れ──小松耕輔訳『ファウスト』『椿姫』

 むすびに
 参考文献一覧
 略年譜
 あとがき
 主要外国作品原題・邦題対照表
 主要索引

大西由紀[オオニシユキ]
著・文・その他

内容説明

オペラへの野心が感じられる鴎外・逍遙の戯曲から、帝劇歌劇部を経て、お伽歌劇や浅草オペラに至るまで―。試行錯誤の中から誕生した和洋折衷の「日本語オペラ」の実態を、台本の精読をとおして明らかにする。

目次

第1部 物語る声は誰のものか―東西の戯曲形式の狭間で(オペラが目指されなかった時代―演劇改良論から新劇運動まで;二つの浦島劇―森鴎外『玉篋両浦嶼』と坪内逍遙『新曲浦島』;オペラと歌舞伎と「叙事唱歌」の距離―北村季晴『露営の夢』)
第2部 音楽劇は何を物語るべきか、何を物語れるのか(日本人による初期の歌劇上演;帝国劇場の試行錯誤;帝劇歌劇部の達成したもの)
第3部 歌とセリフは、それぞれ何を物語るのか(実験の場としての「お伽歌劇」;レコードになったお伽歌劇;浅草オペラ―観客の支持した新しい音楽劇)

著者等紹介

大西由紀[オオニシユキ]
東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程修了。博士(学術)。専門は比較文学・翻訳論。現在、東京大学大学院総合文化研究科助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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小暮総帥

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明治~大正初期、日本でオペラがどのように受容されていったかを実証的に迫った労作。本書では特に、当時の演劇人が、異質な表現技法であるオペラに対して、近世以前までに培ってきた芸能を足掛かりに、紆余曲折を経ながらも徐々に修得していく様が示されている。資料もあまり多くなく、そもそも演劇が一回性の表現形態であるため、その内容は記録に残すのが難しい。そのなかで実際にどのような公演内容だったかを推定する本書は、今後の日本演劇史の研究で重要な資料となるだろう。2020/10/31

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