内容説明
主家土岐氏を凌駕し「無双の福貴、権威の者なり」と称された妙椿、周辺諸国を巻き込む大乱「舟田の乱」を引き起こした妙純。守護代一族から勢力を伸ばし、美濃に戦乱の世を到来させた父子の動向を通して、室町から戦国へと移りゆく社会の変容を解き明かす。
目次
第1章 斎藤氏の主家・土岐氏の抬頭と発展
第2章 美濃国守護代・斎藤氏の興隆
第3章 武勇に優れた斎藤利永
第4章 土岐氏を凌駕した持是院妙椿
第5章 持是院妙純と美濃の争乱
第6章 持是院家の衰退
第7章 永正・大永の乱と土岐頼武
第8章 史料にみえる斎藤氏一族
第9章 禅宗に帰依した斎藤氏
第10章 斎藤氏を支えた被官たち
著者等紹介
横山住雄[ヨコヤマスミオ]
昭和20年(1945)、岐阜県各務原鵜沼生まれ。犬山市役所退職後、犬山市にて行政書士事務所を開設。業務の傍ら、濃尾地方の中世地方史並びに禅宗史を研究し、周辺地域に残された多くの歴史・宗教史の基礎史料を丹念に猟集し執筆することで定評がある。令和3年(2021)逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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フランソワーズ
8
下剋上の代名詞こと”マムシの道三”ではないほうの、斎藤氏。知名度は恐ろしく低いけれど、応仁の乱の時代、「無双の冨貴、権威の者」と言われた妙椿。そしてそれを受け継ぎ、守護土岐氏を凌駕した妙純。順調に下剋上完遂するかと思いきや、まさかの土一揆に襲撃されて犬死。本書は史料の乏しい”持是院”斎藤氏の事績を追っているが、いかんせん主家土岐氏のそれすらも少ないために、全貌を追うとまではいかない。それでも比較的充実している禅宗関係の史料をもとに、なんとか関係人物を紹介している。なかなか貴重な一冊。2023/04/20
BIN
6
著者の「美濃の土岐・斎藤氏(改訂版)」の再刊本ということで以前に読んでました。応仁の乱で西軍に属し無双していた斎藤妙椿。養子の妙純も無双していたものの最後が一揆で討ち死にとは。抜擢し斎藤姓まで与えた石丸利光に謀反されるのは無惨。一次資料が乏しいので寺の記録が多く、そんな史料も収集しまとめられた著者の力作に脱帽です。最後のコメントに多少はアップデートはあるものの未だ前斎藤氏の研究の基本となっているもののようです。2024/03/27
Abercrombie
4
斎藤道三ではなく春日局の先祖の方。美濃守護代として妙椿・妙純の時代に黄金期を築いた、いわゆる前斎藤氏の事績。史料の乏しい中、金石文や禅籍などあらゆる手段を用いて著される、滅亡した一族の足跡はとても貴重だ。2023/06/23
娑婆乃呼吸
3
横山住雄氏の著作を復刊した評伝。 斎藤妙椿・妙純の名をタイトルに冠していますが、元は『美濃の土岐・斎藤氏 利永・妙椿と一族』だったように、いわゆる「前斎藤氏」につちてまとめられた一冊となっています。 元々平成9年に改訂版が出された、少し前のものなので、やや古い内容も多少あるものの、そもそも斎藤氏、特に前斎藤氏研究については史料も限られているので貴重すぎる書籍だと感じました。 登場人物の知名度が低く、また禅宗絡みの話は難しく感じましたが、横山氏のフィールドワークも交えた研究成果に、読んでいて脱帽しました。2023/02/06
オルレアンの聖たぬき
2
美濃の斎藤妙椿は、後斎藤氏の斎藤道三の陰に隠れてしまいがちだが、室町幕府が一目置くほどの重要な存在だった、そしてその後の興亡もかなり面白い。前斎藤氏の末裔は宗家の衰亡がありながらもその後も枢要な存在として名脈を繋いでいる。2023/12/24