内容説明
“将軍殺害”という未曾有の大事件となった永禄の変にいたる三好氏との対立、協調、決裂の過程をていねいに整理し、激動の生涯のみならず、末期室町幕府の内実も活写する。将軍権力が最も動揺した時代に、義輝が目指した新しい統治体制とは!?
目次
第1部 足利義輝の誕生と畿内の動乱(義輝の生まれた時代;新将軍義藤と父義晴の死;朽木への移座と帰洛;三好長慶との対立;義輝の離京と三好長慶の京都支配)
第2部 義輝の帰洛と永禄の変(三好方との和睦、念願の帰洛;帰洛後の幕府の様相;義輝と大名との秩序関係;朝廷・公家衆との関係;三好氏と伊勢貞孝;永禄の変での死は偶然か必然か)
著者等紹介
木下昌規[キノシタマサキ]
1978年生まれ。大正大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)。専門は日本中世史(室町・戦国期)。大正大学非常勤講師を経て、大正大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
19
最近の三好政権を再評価する流れから、「策謀家」「無能」といった印象もある足利義輝。本書はそうした評価を見直し、義輝が幕府の秩序回復のため、いかに苦闘したかを描いている。就任直後は好悪に任せて政務を行い、三好長慶に敗北して朽木に逃れるなど屈辱もあったが、京への帰還後は中立政策を貫き、将軍権威向上に努めている。ただ将軍を支える有力大名に欠き、自ずと側近衆・女房衆が中心の政治になってしまったのが、三好氏との対立の遠因となる。義輝が目指したものと限界がよくわかる一冊。あと義輝の好みは剣でなく馬。「剣豪」ではない。2022/05/07
Toska
8
『〜と三好一族』というタイトルだが、中身はほぼ足利義輝オンリー。全否定or全肯定で語られがちなこの人物について、父・義晴の政治構想や母方実家・近衛家との関係、側近たちの動向、あるいは経年による本人の成長など重層的な分析が行われている。読み応え充分の一冊。注目が高まっている三好政権に対しても、義輝の視点から改めて捉え直す必要があるのではないかと思う。2023/03/02
フランソワーズ
7
足利義輝と三好長慶とその一族の動向を追いながら、義輝が生きた室町幕府・室町将軍というものを考察。もはや足利氏という貴種性だけでは天下を治められない時勢、いかにして義輝は将軍権力の強化を図ろうとしたか、その苦闘が論述されています。その際、側近や女房衆などの直臣・幕臣が果たした役割は想像以上に大きかったことが理解できました。そして運命の「永禄の変」、著者が考える”説が最も穏当ではないでしょうか。2021/11/23
かわかみ
5
北条得宗家が専制的に執政した鎌倉幕府や徳川将軍家の威光と実力が比類なかった江戸幕府と比べて室町幕府の政体はわかりにくい。室町〜戦国にかけての時代に社会的階層の対流が激しかったことが一因だろう。そうした時代の中で本来、陪臣であった三好氏や松永氏が勢力を伸ばし将軍直臣となったのである。将軍義輝は三好氏による御所巻とも見える反乱(永禄の変)で落命するが、その後を継いだのが室町幕府最後の将軍となる義昭であった。信長が義昭を奉じて入京し天下を執政することを試みた先例として三好、松永両氏をとらえることもできる。2022/12/10
相馬
5
最近はすっかり剣豪将軍ではなく、陰謀家、ダメダメ将軍のイメージの義輝。ふむふむ、前半はやはりダメダメだけど、後半の帰洛後は、一応中立であろうとし、将軍の権威あげを図ったり、それなりの評価なのか?永禄の変、木下さんは進士晴舎・小侍従局らの排除目的の御所巻→義輝抗戦説。天野さんだったかは殺害目的説らしいけど、自分は御所巻説だなあ。あと、三好氏の対応もよく整理されてる。2022/02/09