内容説明
武田信玄・上杉謙信・今川義元ら名だたるライバルとの激戦を乗り越え、領国支配でも類いまれな才略を発揮した知られざる英姿を気鋭の研究者たちが最新の成果で解き明かす!
目次
第1部 氏康の人物像(「今代天下無双の覇主」五十七年の生涯;北条家の繁栄をもたらした氏康の家族;五〇〇通を超える発給文書の諸問題;側近く使えて氏康を支えた家臣たち;氏康の教養と文芸)
第2部 氏康の領国支配(氏康の家臣団統制―太田康資衆の譜代家臣化;氏康の軍事政策;氏康の民衆統治―北条氏と「百姓中」「町人中」「職人衆」;戦争と飢饉の中で展開した商業・流通政策;北条市の宗教政策と氏康期の特徴)
第3部 氏康の合戦と外交(北条氏と山内・扇谷両上杉氏;氏康と古河公方の政治関係;対立から同盟へ―今川義元・氏真と氏康の関係性;氏康と武田信玄―第一次甲相同盟の展開;関東をめぐる氏康と上杉謙信;北条氏康の房総侵攻とその誓約;氏康期の京都外交)
著者等紹介
黒田基樹[クロダモトキ]
1965年生まれ。早稲田大学教育学部卒。駒沢大学大学院博士後期課程満期退学。博士(日本史学、駒沢大学)。現在、駿河台大学教授。著書・編著多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
13
北条氏康の最新研究を並べた論集。宗瑞、氏綱の創業期を経た発展期といった感じで、上杉謙信・武田信玄・今川義元ら曲者揃いの大大名相手に多方面作戦を展開する姿が圧巻。ただ四方に敵がいる辛さもあって、とくに房総の里見氏との戦いの章では、地理的制約と他戦線との兼ね合いで、あと一歩で仕留めきれない歯痒さも感じたり。また幕府との通交では祖である伊勢氏に取次を頼んでいないのが意外で、大館氏や近衛氏ルートを活用している。他にも氏康期の淡白な中央との関係が、後の織田・豊臣政権との対応で後手に回る遠因ではという指摘も興味深い。2021/08/31
Toska
6
前に洋泉社から出ていた『○○研究の最前線』をグレードアップしたような印象。断片的な史料から氏康の妻妾の身元を突き止めようとする朝倉直美氏、「文武両道」の通俗的イメージにとどまらず和歌の真作の分析を通じて北条氏の文芸レベルを探る小川剛生氏、戦国大名の軍隊編成の実態という難問に真正面から切り込んだ平山優氏、対幕府・朝廷外交における北条氏の特徴を探る木下聡氏の各論考が特に興味深いと思った。各研究者の持ち味がよく表れていて、読んでいても楽しい。2022/01/17