内容説明
名も無き武士たちは何度も主君を替えた!彼らは何を求め、全国を渡り歩いたのか!?近年の新出史料である「里見吉政戦功覚書」を紐解き、戦国武士の生きざまを探る!
目次
戦場を彩った無名の武人たち
吉政、下野国小山に現る!
戦国武士たちの人間模様
「棟梁」としての誇り
滝川一益と神流川の戦い
信長の「惣無事」崩壊と東国情勢
初めて関東を離れた九州従軍
難攻不落の忍城攻め
井伊直政との運命的な出会い
彦根藩の重臣となる
名もなき武士が残したもの
著者等紹介
竹井英文[タケイヒデフミ]
1982年、東京都生まれ。千葉大学文学部卒。一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。現在、東北学院大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サケ太
26
名もなき武士の生きた時代に想いを馳せる。「戦功覚書」を元に、里見吉政の経歴を追っていく。「吉政覚書」が書かれた目的は非常に興味深い。諸国や諸将を渡り歩いてきた武士。彼が経験した戦、その功績や失敗談。今までの史料では見えなかった戦の実態。吉政の人物が見えてくるのが楽しい。しかし、「戦功覚書」の内容は全てが正しいわけではない模様。意図のわからない内容も散見されており、今後の研究も気になる。他の史料との比較検討をしていって、様々な戦を復元していくのは面白い。その時代を生きた武士について触れられるのが素晴らしい。2019/10/21
MUNEKAZ
14
一介の武士たちが子孫の為に自らの功名を書き上げた「戦功覚書」。その中から里見吉政の残した『吉政覚書』を取り上げ、生涯を追う。幾多の主君を乗り換えて、生まれ育った関東から、南は九州、北は奥州と列島を駆け巡り、最後は彦根藩の重臣に収まる。なんとも波乱万丈に思えるが、同じような遍歴の武士たちが一期一会で登場し、吉政が決して特別な存在でなかったことがよくわかる。また各地を飛び回っていても名字の地である里見郷との縁が切れていなかったり、話題の取捨選択に個性が感じられたりと、あくまで個人の記録であることが面白い。2019/10/26
Toska
8
戦国史を探る上で、「戦功覚書」は極めて有望な史料であると感じた。具体的な戦いの様子や武士たちのメンタリティについての手がかりを与えてくれるし、他では聞くことのできない著名人の肉声が伝わってくるのも魅力的(例えば北条氏照など)。ちなみに、里見吉政が仕えた井伊家中には北条家のOBが多かったようで、木俣守安が狩野一庵の孫にあたるという事実には驚き。かつての同僚や敵たちが集まってどんな話をしていたのか、想像するだけで楽しい。2022/02/07
四不人
6
まったく知らない東国武士の話だったが、面白く読めた。戦国期の軍事力のあり方は多様で、このような「渡り歩く武士」の寄与が思ったよりずっと大きかったんだな。特に「渡り歩く」動機が知りたい。単なる「報酬」の問題だけでは無さそう。西国の事例ももっと知りたいところ。「働書」や「軍功書上」の分析はこれから流行りそう。2019/12/18
金監禾重
5
「戦功覚書」という癖のある資料の魅力に惹かれた。同時代に書かれた一次資料ではないものの当事者あるいは当事者から聞き取ったかなり同時性の高い資料、しかも細密なことまで生々しく書かれているという利点がある。一方、記憶だよりであるためか年代の間違いが多く、卑近な記述ゆえに一次資料での検証が難しい、ということから信憑性が低く見られがちである。しかし研究の蓄積により、「戦功覚書」相互間や一次資料による裏付けがなされた部分もあり、注意は必要ながら貴重な資料群であることは明らかだ。2022/06/28