内容説明
性科学の第一人者・高橋鐵が戦前に刊行した2冊の作品集「世界神秘郷」と「南方夢幻郷」を完全収録!単行本未収録作7篇も収めた高橋鐵怪奇小説全集!
著者等紹介
高橋鐵[タカハシテツ]
1907(明治40)年、東京生まれ。日本大学文学部心理学科卒。在学中にアルバイトとしてカルピス宣伝部に勤務。卒業後、松竹キネマの脚本部に入ってシナリオライターを志すが挫折。33(昭和8)年に東京精神分析研究所に入所して心理学者・大槻憲二の門下となる。「精神分析」に発表した論文でフロイド賞を受けたこともあった。37年、「オール讀物」に「怪船人魚号」を発表して怪奇探偵作家として活動を開始。40年発表の「太古の血」が当局の忌避に触れたことで怪奇小説の執筆を断念。41年、日本生活心理学会を創立。71年没
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968(昭和43)年、神奈川県生まれ。出版社勤務を経てミステリ・SF評論家、フリー編集者。編著に『天城一の密室犯罪学教程』(第五回本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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geshi
27
戦前に一時期流行った異郷幻想小説。異国の文化や風習を取り込んだ流麗な文章で、本の中に未だ見た事のない世界を幻視させる。イースター島や北極なんて、よくこの時代に取り入れられたものだ。『孤島の瞳人』の瞳人が出てくると気の瑞々しさ、『氷人創生記』の氷に捕われた女の冷厳、『怪船「人魚号」』の人魚への狂気的であるがゆえの耽美、幻想のロマンティシズムが溢れている。モチーフとして繰り返される、異人に魅入られる男と元の世界に留まる女の悲恋に終わる物語に作者の恋愛観がはっきり表れているな。2016/10/12
ぶうたん
2
解説で書かれている通り、世界神秘郷以外は読むことすら難しいので出版されただけで高い価値がある。ただし全体的には時代背景を考慮しないと単純に楽しめない作品が多いように思う。当時としては異国の見知らぬ風景だけで一種の幻想性を演出できたのだろうが、今読むとその辺りは相当に弱くなっている。そんなこともあり個人的には一部の作品を除いてやや期待外れで、単行本未収録作品の方が想像力を発揮した作品が多く感じられ楽しめた。大河内常平が後回しになったのは残念だけど、次の橘外男は大好きなので楽しみ。2014/11/18
Genei-John
0
まとめて高橋鐡を読むのは初めてだが、橘外男、小栗虫太郎と遜色ない面白さ。ところで本書では小栗蟲太郎と表記されていたが、戦前でも小栗の場合は、虫を蟲と表記するのは誤りだよねぇ。2014/11/17