内容説明
戦前派きっての本格ミステリの名手として再評価著しい大阪圭吉のスーパーレア短篇38篇を一挙に収録!
著者等紹介
大阪圭吉[オオサカケイキチ]
1912(明治45)年、愛知県生まれ。日本大学商業学校卒業。1932(昭和7)年、甲賀三郎の推薦によって「新青年」に「デパートの絞刑吏」を発表してデビュー。1936(昭和11)年には早くも初の単行本『死の快走船』を刊行している。以後、探偵作家として本格ミステリ、ユーモア小説、スパイ小説、秘境小説、捕物帳と様々な作品を発表したが、1943(昭和18)年に応召し、1945(昭和20)年にルソン島で戦病死。戦前には貴重な本格ものの書き手として70年代から再評価の機運が高まり、その論理的な構成と端正な文体は、現在でも人気が高い
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968(昭和43)年、神奈川県生まれ。出版社勤務を経てミステリ・SF評論家、フリー編集者。著書に『日本SF全集・総解説』『ミステリ交差点』、編著に『天城一の密室犯罪学教程』(第五回本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
52
ミステリ珍本全集四巻目。大阪圭吉というと創元推理文庫から出ている「銀座幽霊」「とむらい機関車」がまず頭に浮かび、戦前の本格派の驍将とミステリ珍本が結び付かなかったわけだが……。実際読んでみるとユーモア小説や戦時下での時局に結び付いた小説が大半を占め、ああ確かにこういう意味では珍本だなと納得させられる。先の二冊のようなトリックに淫した作品は無いものの、著者の違った一面を見せてくれるという意味では貴重な一冊。本格ミステリも好きだけど、こういうユーモアも結構好き。未読の人は先の二冊から読んだ方がいいだろうけど。2016/01/18
geshi
29
本格ミステリは少な目でユーモア小説や戦時下での翼賛小説が多い短編集。『死の快走船』のみ既読だったが、読み返してみると後の作品に比べて地味ではある。けれど計算上の推理と現実との違いや被害者の遺した言葉などにワクワクする探偵小説。『慰問文夫人』『翼賛タクシー』のようなユーモラスで牧歌的な話もあれば『九百九十九人針』『約束』のような感動系もあり幅広いこういった軍人賛歌な作品をちゃんと読むのは初めてかも。パート3の『香水夫人』はユーモア探偵小説でストーリーの転がし方に一捻り加えられていて面白い。2017/07/17
くろばぽん
3
「銀座幽霊」「とむらい機関車」と読み進めて本書。前2作とは違い、本格ミステリーよりユーモア作品が主の短編集。戦意高揚を目指した(作家本人が目指したかどうかはわからないが)文章がところどころに見られるのも興味深い。まさかの真相が心を打つ「九百九十九人針」、鮮やかなどんでん返しが笑える「慰問文夫人」がお気に入り。所在不明の長編、発見されないかな・・・2014/12/18
Genei-John
3
千人針ものを中心に、戦時下の特殊な風俗を小道具として上手く生かして大阪圭吉のユーモア小説がこんなに面白いとは。思えば本格探偵小説でも小道具の使い方が上手い人だった。2014/10/08
Susumu Kobayashi
3
大阪圭吉の本格探偵小説に関しては創元推理文庫『とむらい機関車』と『銀座幽霊』でカヴァーされており、数年前に出た論創社の『大阪圭吉探偵小説選』には長篇『海底諜報局』と防諜探偵横川禎介シリーズが収録されているが、今度のはそれに漏れたものを集めて単行本五冊分を補完し、さらに単行本未収録短篇8編を収録している。時局を反映した内容だが、「九百九十九人針」や「約束」には熱いものがこみあげてきた。この二つが読めただけでも収穫であった。また、「ほがらか夫人」は夫人のキャラクターが良い。2014/08/01