出版社内容情報
わたしにとって世界は、いつも陽が沈んだあとの夕暮れのようだった。あの日が訪れるまではーー。森に囲まれた湿原に春が訪れるといっせいに小さな花が咲く。5枚の花弁を持つその花を、人びとは星の花と呼んだ。湿原のすぐそばに暮らす少女リシュの目は、光に弱く、いつも遮光眼鏡で覆われていた。その瞳が、いつかあるはずのないものを見つけ、母の、そしてこの国の、過去を開いていくとも知らずーー。
内容説明
森に囲まれた湿原に春が訪れるといっせいに小さな花が咲く。五枚の花弁を持つその花を、人びとは星の花と呼んだ。湿原のすぐそばに暮らす少女リシュの目は、光に弱く、いつも遮光眼鏡で覆われていた。その瞳が、いつかあるはずのないものを見つけ、母の、そしてこの国の、過去を開いていくとも知らず―
著者等紹介
濱野京子[ハマノキョウコ]
熊本県に生まれ、東京に育つ。『フュージョン』でJBBY賞、『トーキョー・クロスロード』で坪田譲治文学賞を受賞。その他の主な作品に『この川のむこうに君がいる』『with you』(ともに青少年読書感想文全国コンクール課題図書選出)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まる子
20
舞台は日本ではない国。その湿原には「星の花」と呼ばれる小さな花が咲く。しかしある場所だけにはなかなか咲かない。光に弱いからとどんな時も遮光眼鏡を外せない少女リシュ。咲かない花と遮光眼鏡の理由がわかった時、紛争、差別、格差、隠蔽が次々と明らかにー。この国で、あの場所で、何が行われたのか。祖母から伝わったリシュの隠されたある能力が、あの場所や人々を救う。母親とリシュの結ばれない恋に運命を感じる。静かな中に様々な力が動いている物語。不思議な感覚のYAだった。2025/07/31
信兵衛
16
現実的な物語であろうと、ファンタジー物語であろうと、戦争あるいは侵略がどれほど人々に悲劇をもたらし、心を傷つけるか、は変わりありません。 そして、傷つけ合うことは、お互いの間に根深い憎しみしか生み出しません。施政者は、広く人々の幸せを守るための行動をして欲しい。それが、本作から感じる思いです。2025/08/28
りらこ
16
遮光眼鏡越しに見ていた世界。宗教家が独裁者となり、攻めてきた隣国。そして終戦後の世界。最初に遮光の世界から始まるせいか読みながら見えている世界がすぐにモノクロになってしまうけれど、そこから絵を描くことや人との出会い、学校の様子など動き出してだんだん色がついていく感覚に襲われました。主人公の行動によって村が隠してきたこと、湿地の謎などが明らかになるけれど。あれ?が残る部分も。余韻が心に残る良書だった。2025/06/16
菱沼
3
面白かった。モデルにしたと思われるこの国やあの国の史実、宗教、ナチスのことなどを思った。国際法違反の毒ガスを作っていた、日本の大久野島のことも。戦前・戦中・戦後、そして主人公のいる現在までの時間が短すぎるような。最初のあたりは、戦後から十数年のことのはず。また、国と国との争いという大きな出来事を扱っていながら、狭い範囲の人間関係と偶然で終わっているような気も。この作品に限らず、異世界の物語に「りんご」「はちみつ」「馬」「犬」など、私たちの世界のものが出てくるのはどうしてなのだろう。2025/08/22
ねこ
3
母子三代の物語。縦軸は恋、横軸は戦争。きゅんきゅんした恋というより、ままならない恋。恋ってそんなもんだよね。そんななかを生きて抜いて女たちが逞しい。濱野さんの作品はやっぱり濱野さん。2025/07/04