出版社内容情報
いつもと同じ朝、中学3年生の涼平の父親は、たいほされた。容疑は殺人―。真相も知らされないまま、突然“加害者家族”となった息子は、父と同じ、決して許されることのない罪を背負った加害者なのか、それとも、父に裏切られた被害者なのか……。
内容説明
いつもと同じ光景、いつもと同じ朝食、いつもと同じ朝、中学3年生の涼平の父親が、逮捕された。容疑は殺人―。何かの間違いか、そうでなければ事故だったと信じたい涼平だったが、父親は家族との面会をかたくなに拒む。真相も知らされないまま、突如“カガイシャカゾク”となった涼平は、父と同じ加害者なのか、それとも憐れむべき被害者なのか…。
著者等紹介
いとうみく[イトウミク]
神奈川県生まれ。『糸子の体重計』で日本児童文学者協会新人賞、『空へ』で日本児童文芸家協会賞を受賞。『二日月』が2016年度、『チキン!』が2017年度の青少年読書感想文全国コンクール課題図書に選ばれるほか、『かあちゃん取扱説明書』『アポリア』『カーネーション』『ぼくらの一歩 30人31脚』『トリガー』など著書多数。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
118
これが児童書なのか。受験を控えた中3の主人公涼平。両親弟との四人家族、彼女もでき充実した生活を送っていた。しかし、ある日父が人を殺し逮捕されたことで残された家族の生活は一変する。逃げるように母の実家へ、母方の姓を名乗り転校する。そして面会を拒絶する父。父の犯罪で自分も父の被害者のつもりになって自分を憐れんでいたことを自覚し、被害者にも家族がいたことを改めて認識する。別れも告げずに離れてしまった親友、彼女に漸く送ったメール、その返信に胸が熱くなる。大人にも読んでほしい一冊。2022/03/24
taiko
90
ある日突然、父親が殺人犯として捕まった。父は何も語らず、会うことも拒んでいる。加害者家族となった中三の長男涼平の目線で描かれた葛藤と許しの物語。…こんなことがあったら、残された家族はどんな気持ちになるのか。ニュースで見ることがある事件の裏でも、同じようなことはあると思いますが、想像することはほとんどありませんでした。子供を守らなければと真っ先に考えた母、事実を知った時に奇声を上げ、心を閉ざしてしまった次男、そして傷つけられることを恐れ、周りとの距離を取ることを選んだ涼平。どれも辛く悲しいこと。→続く 2019/12/22
やも
87
話は中3の涼平目線で語られる。いつも通りの日常のある日、父親が殺人容疑で逮捕。幼い弟も父親が人を殺したということを知り…。もうここのシーンがかわいそうで、かわいそうで、思わずページを閉じてしまった。深呼吸してから再度読み始めたけど、加害者の息子という立ち位置は変えられない事が、苦しい読書だった。もし身内が、この人と結婚したい。って連れてきた人の親が刑務所にいたことを知ったら、反対すると思う。自分の中の偏見や思い上がりを無理やり実感させられてしまった。自分だって何か過失で犯罪者になる可能性はあると言うのに。2022/06/23
chimako
87
中学生にとって肉親の犯罪はこの世の終わり程の意味を持つ。世界が閉じてしまう。涼介の父親が殺人犯として逮捕された。母親は事が大きくなる前に引越をする。離婚して名字も変える。子どもを守りたい一心だが、自分自身を守りたい気持ちももちろんあるだろう。犯罪者の家族を見下す世間。まるで鬼の首を取ったように騒ぎ立て追い詰める風潮はきっと今も昔も変わらない。その中でも壊れない友情。今はネットであっという間に拡散され、全く見ず知らずの人からの誹謗中傷に晒される。本作には描かれていないが一番恐ろしいのはそこなのかもしれない。2019/08/17
ゆみねこ
85
中三の夏休み直前、いつもと同じ朝、突然父親が逮捕された。いきなり「加害者家族」になった音石涼平、とても重い現実を描いていますが、YA向きなので読みやすかったです。皆さんにお薦めです。2019/03/29