内容説明
妻と娘との三人家族のわたしは、職場でも家庭でも孤立していき、限られた小遣いの中でわずかな喜びを見出す日々。強靱な精神を持つ妻に太刀打ちできないわたしは家出することで抵抗するが…「愛の様式」。苦手なドッジボールに誘われるまま参加したことをきっかけに、現実のぼくの心と体はどんどん乖離していく。十歳を目前にしたぼくはすべてを消し去ってしまおうと決意する…「冷たい丘」。この世界はしらふで生きていられる場所じゃない。勝者しか存在を許されない会場で、ぼくたちは倒れるまで下手なダンスを踊り続けるしかない…「舞踏会」など。5編の妄想と諧謔によって綴られる佐川恭一ワールド全開の一冊。
著者等紹介
佐川恭一[サガワキョウイチ]
滋賀県生まれ。京都大学文学部卒業。「踊る阿呆」で第2回阿波しらさぎ文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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路地
50
佐川さんの作品を読むと、他人には見せたくない自分の弱さ汚さを鏡で見ているような辛い思いになる一方で、自分だけじゃないのかもとほっとする感覚もあり不思議な気持ちになる。実は普遍的なのに大っぴらにはされないことを、いとも簡単に言語化してしまうような作風がとても好きだ。欺瞞に満ちた社会と自分自身の人生に踊り続ける様が描かれた『舞踏会』が、粗くも力強くて良かった。隣町で身近な浜大津アーカスが登場する『友情』では、自意識過剰な主人公に自身を投影して身悶えしてしまう。2022/10/18
KON
38
小説を読み始めた数年前、文章が美しいみたいな高尚な感性が理解できなかったが、言わんとしていることは段々わかってきた。利き文章みたいなことをやったら一問も正解できないだろうが、作家独特の文章があることもわかってきた。その中で自虐的なのに面白すぎる文章に出会ったのは今回が初めて。2023/02/01
そうたそ
18
★★★★☆ 決して人生が順調であったとは言えないような者たちの心の奥底にあるものを思い切りぶちまけたような作品。良かったのは冒頭の「愛の様式」。話としてもこれが一番まとまりよく、程よく突き抜けた感じが面白い。自虐もここまでいけば、文学になるのだと見せつけられた感がある。「友情(浜大津アーカスにて)」は滋賀の地元民としては、よりその場面が鮮明に浮かび上がった意味でも面白みの増した作品だった。読む人を選ぶ感じはある作品だが、この狂気性にハマった人は抜けられないだろう。2022/02/24
うさぎ
17
面白かった。佐川恭一さんの書く文体が癖になる。ニヤニヤ笑ってしまいつつも、どの話もオチがあって面白かった。2024/02/04
金平糖
3
B+。2022/12/20