目次
1(こぼれる;青いコップ ほか)
2(開放弦;線香と春 ほか)
3(夏の窓;ビードロ ほか)
4(迂回路;草原 ほか)
著者等紹介
笹川諒[ササガワリョウ]
長崎県諌早市出身。大阪大学文学部卒業。2014年より「短歌人」所属。「ぱんたれい」同人。第19回〓瀬賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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太田青磁
10
知恵の輪を解いているその指先に生まれては消えていく即興詩・一冊の詩集のような映画があって話すとき僕はマッチ箱が見えている・ソ、レ、ラ、ミと弦を弾(はじ)いてああいずれ死ぬのであればちゃんと生きたい・バグパイプのくきやかな音を聴きながら七月は縦の季節と思う・雲を見てこころも雲になる午後はミニシアターで映画が観たい・おおかたはひかりのこと、と言うひとはいつもギリシャをギリシアと呼ぶ・振り返り、また振り返る。永遠にオーボエでA(アー)を吹く少年を・ランニングシューズがずっと選べずに色が過剰な和菓子を買った2021/04/18
rinakko
9
〈椅子に深く、この世に浅く腰かける 何かこぼれる感じがあって〉〈いつか消す火が燃えているこの指であなたの梨の詩をまた開く〉〈幸せの塑性について(愛されて翼をなくす鳥を見ていた)〉〈クリムトの絵画、メーテル、暗がりの杏子酒(ながれるよるはやさしい)〉〈静けさに(あなたがついに手放した水ではないが)口をゆすいだ〉〈そう、その気になれば天使のまがい物を増やしてしまうから神経は〉〈夜の底に一枚の板を敷くために教わっている鏡学の初歩〉〈きっと覚えておけると思うアラベスクいつか壊れてゆく体ごと〉2021/02/09
シロクマぽよんぽ
4
坂月さかなさんの表紙でジャケ買い。ジャケットでは可愛らしくひんやりとした水の印象が強いが、歌集そのものは夜の暗い水というイメージ。単純に爽やかで可愛らしい歌集ではない。例えば「グラスには静かなレモン 絞るほどあなたが痩せるような気がして」のように、前半では爽やかなイメージを意識させつつ、それを後半でひっくり返すような詠み方が多いなという印象。お気に入りは「ゴダールの海は現実の海より青くてそれを二人して観た」、「特急の座席でよく行く美術館のにおいがふいにして 雨は鐘」。2021/07/25
yumicomachi
2
不思議と懐かしいような、透明感あるこころと言葉で丁寧に作り上げられた世界に誘われる。〈文字のない手紙のような天窓をずっと見ている午後の図書館〉〈呼びあってようやく会えた海と椅子みたいに向かいあってみたくて〉〈線香と春は近しいのだけれど美味しいパンを買いに行こうよ〉〈雲を見てこころも雲になる午後はミニシアターで映画が観たい〉〈硝子が森に還れないことさびしくてあなたの敬語の語尾がゆらぐよ〉〈たとえば、がとても遠くで泣いていてあなたはそこの土地勘がある〉等。監修・解説は内山晶太。2021年2月刊。著者第一歌集。2021/03/10
r
1
ずっと前からきみに会いたかったような気がする。三月七日2022/03/08