内容説明
無人だと思われていたメラネシアのある小島で、二十代半ばと見られる一人の男が救出された―。なぜ男は、このような島に、腹を裂いて横たわっていたのか?終戦後、世界から隔離された南洋の島で、取り残された兵士の末裔の壮絶な運命を描いた表題作ほか、奇妙で不思議な魅力あふれる物語全4作を収録。
著者等紹介
澤西祐典[サワニシユウテン]
2011年、「フラミンゴの村」にて第35回すばる文学賞受賞(集英社より書籍化)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
春
14
第二次世界大戦後、日本から遥か遠くの無人島で割腹自殺を図った男性が発見されるところから綴られる彼の半生。自然の描写が圧倒的。南の島の肌を刺す太陽や裸足で踏みしめる岩場のざらつきがまざまざと感じられる。 弟の誕生で家族から孤立を深める主人公。 「テンノウヘイカバンザーイ」と言ってみせる弟を可愛がる祖父の瞳に嫌悪を見出す場面が印象的。結局、祖父も最後の記者たちと同じであるということだったのか。ラスト数ページは、境遇に物語性とか悲劇的なものを過分に掬いとって愛でてしまう人間の身勝手さが残る。2021/08/21
のりすけ
12
表紙に惹かれて。設定とかはすごく好みなんだけどなぁ。もう少し親切設計にしていただけるとありがたいけど、そうするとこの作品の良さも消えちゃうんだろうし。2020/01/09
Yui.M
8
作者のデビュー作『フラミンゴの村』を読んだことがあったが、本作品はよりいっそう心に残る1冊になった。表題作を含め4つの短篇が収録されている。『氷の像』にとくに感銘を受けた。〈供物の像〉を彫る偉大なピョリッヒ、シャウルルルーの伝説を病床に伏せる大叔父が語る構成になっている。その内容も壮大だが、ラストには大叔父のまわりの人物のみならず読み手にまである問いが投げかけられたように感じられ、作品の広がりに魅せられた。書き手としては伝説にゴシック体、地の文に明朝体を採用しがちだが逆にしている点も意表を突いている。2024/06/07
ちゅう
8
表紙のイラストが美しい。4編からなる。雨とカラスは、無人島と思われた島で、割腹自殺を図った青年が発見された。その青年の半生。氷の像は、ツンドラ地方に住むパラカイ族の、氷の彫刻のピョリッヒ、最も優れた者で、あらゆる労役から解放されるの中でも優れているシャウルルルーの話。雨の中傘の下、国際あなた学会。前2作は、ああ、そうなんだ、と読んだけれど、後2作は、さっぱり分からなかった。多分繊細な人には合うのかも。2019/11/27
jolly
3
安定の澤西作品。設定勝負でおもしろい。2020/08/05