出版社内容情報
【魂はどこにでもいける】
生と死の水際にふれるつまさき。
身体がこぼさずにはいられなかった言葉が、立ち上がる。
(東直子)
【5首】
うつくしい島とほろびた島それをつなぐ白くて小さいカヌー
心さえ無かったならば閉園のしずかに錆びてゆく観覧車
松葉杖で木星を歩く ここでしか吹けない君のろうそくがある
熱傷をはだかの腕にひからせてあなたがひらく犬の肋骨
喉をもつ空が洩らした嬌声のねえさん、星をもう蹴らないで
二三川 練[フミガワ レン]
著・文・その他
目次
1(夏の収束;レプリカドール)
2(烙印;かなしいからだ;天使の共食い)
3(秋晴れの砂漠;砂の星/凍えた村;肋骨に雨)
4(果てにいる;Babel;蟻の体液)
5(それを夜と呼ぶ;燃えるくじら)
著者等紹介
二三川練[フミガワレン]
日本大学大学院芸術学研究科博士後期課程芸術専攻在籍。研究対象は寺山修司の俳句と短歌。象短歌会、俳諧無心、詩会クレプスカに所属。練くん連句の会主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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太田青磁
9
同棲は「棲」だからいい ずぶ濡れで帰ってきたらタオルをわたす・ふれるたび低体温を自覚する 人間らしい口づけをして・文献のコピーを取れば海溝のようにインクの黒くあるノド・初期も後期も同じことしか言ってない人を読んでるいつものカフェで・レコードの音のかすかに軋むとき地球かすめてゆく春の風・墓守のように自販機をつつみこむ枝垂れ桜の剥きだしの腕・くぐもった祖父の言葉のそれぞれを時に間違えつつ訳す母・人権の数だけチョコレートをあげる 君と君と君には空港をあげる・花びらのかたちをしてた石けんが碁石のかたちで洗面台に2019/03/15
有機物ちゃん
7
おとぎ話っぽかったり、ファンタジーぽかったり、絵画的だったり、アイロニーを感じたり、シュルレアリスム??の雰囲気も。何かが朽ちて終わりを迎える寂しさというか、憧憬というか、そういうものも感じるけど、掴みどころがなくて私にはあまりピンと来なかった2024/03/03
曰
3
ある程度場面を想像できる歌とどういうことだろう?となる歌が半々くらいな印象。後者は自分のなかにはない言葉の取り合わせを楽しみながら読んだ。2019/12/27
あや
3
惑星を詠んだ歌が好きです。2019/01/31
冬
2
文喫で1冊だけ選んで購入。秋晴れの砂漠が特に好きだった。「ゆうれいとゆびさす指に蝶がいて手相のような翅をしていた」「恒星の光のとどかない星のしろい魚のこと 忘れない」 意味はよく分からないけど何度も読みたくなる情景が多かった。本棚の1番見えるところに置く。2022/05/21