目次
朝食のあとで 二〇一四年長月
好きと嫌ひと 二〇一四年神無月
松にまじりて傘寿皇后のピアノを聴く 二〇一四年霜月
亡き弟の霊と対話しつつ過ぎた、手術の前と後 二〇一四年臘月
小手術の前と後
オフィチウムを聴きながら作った歌
空白を乗せた列車 二〇一四年臘月
ライヴァル考
水仙と霜 二〇一五年睦月
暮れてゆくバッハ〔ほか〕
著者等紹介
岡井隆[オカイタカシ]
1928年名古屋市生まれ。1945年17歳で短歌を始める。翌1946年「アララギ」入会。1951年現在編集・発行人をつとめる歌誌「未來」創刊に加はる。慶應義塾大学医学部卒。内科医。医学博士。1983年歌集『禁忌と好色』により迢空賞受賞。2010年詩集『注解する者』により高見順賞を受賞。『『赤光』の生誕』など評論集多数。1993年より宮中歌会始選者を21年間つとめた。2007年から宮内庁御用掛。日本藝術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
288
書肆侃侃房のこのシリーズは新鋭の歌人たちをより広く世に出すものだと思っていたら、なんと岡井隆。今は亡き塚本邦雄と戦後歌壇を牽引した歌壇の最重鎮である。その岡井も本歌集出版の5年後に亡くなっており、それは確かに一つの時代の終わりを告げるものだった。この歌集には、友人の訃報に接して詠んだもの、また自らが受けた手術の前後を詠んだものが多く収められている。「旧友がひそやかに逝きし二十日のちわが鼠径部にメスあてられつ」。岡井隆の歌は前衛と称されつつも、かくの如き自然体で詠まれた歌も多い。否、むしろそれこそが岡井隆。2024/05/30
kaizen@名古屋de朝活読書会
46
#岡井隆 #東海のうたびと #短歌 安堵して悦ぶ妻のくちびるを見上げてゐたり点滴うけつつ 手術のため雨の中来た同じ道だ投票に来ぬ術後二十日で かりがねも白鳥(スワン)もごつちゃに水に在る此の列島に俺も棲んでる ヨハン・セバスチャン・バッハの小川暮れゆきて水の響きの高まるころだ 雨が来るかもしれないと傘もつて出た日の午後は詩話の快晴 だめよだめ言ひながら差す雨傘のやうな女は年とらず逝く 2016/07/22
hirom
4
岡井隆氏の最新歌集。高価で買えないけどkindle版のプライムサービスで読ませてもらった。軽々と言葉と遊び、身辺のことなどを歌に詠みこんで心情を歌っているのはとても遥かに感じ、真似ができない。2016/10/18
Cell 44
2
「いやッといふ人は居ないが好きといふ人は夕顔の白さで並ぶ」「霜といふ思想にやられたらしくある。水仙の花冠が荒みはじめた」「はるめいて来しは昨日の空だつた此のごろ見ないと思つてたら 訃!」「いや無論くらく濃く立つ葉脈を昔通ひゐし水のことさ、ね」「肴(な)はあれど酒のまぬ故むらぎもの心のうちにぽつんと在る籠(こ)」過去の自作への応答や折句、詞書を駆使したものなど歌自体にも工夫が多く見られる他、木下杢太郎を倣ったという植物のスケッチや散文も併録され、本自体が多彩で楽しい作りになっている。巻末の附録など、面白い。2016/01/28
フリウリ
1
ここに載った歌の背後にどれほどの歌があったか、その謎は余白2023/01/21