目次
1(駅のひだまり;Suicaで月へ;天国のシュレッダー)
2(オーロラのお針子;8月の魚の骨;天上のかき氷)
3(塩味のたましい;頁をめくる夏;ドライアイス)
4(風のゼリー;ひとり向日葵;冬の図書館)
著者等紹介
藤本玲未[フジモトレイミ]
1989年東京生まれ。「かばん」所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
267
歌集として、とっても魅力的なタイトルだ。これは篇中歌「オーロラのお針子たちとあんみつを食べる 春はさっくり更ける」から、監修者の東直子氏が勧めて決まったとのこと。いいセンスだと思う。歌としてもなかなかに清新である。とりわけ上の句にこの歌人ならではの言葉の選び方が窺えるように思われる。下の句の「さっくり」は新鮮なようでもあるが、若い人の俗語的な感性が出てしまったようでもある。いとも簡単に死への傾斜を詠うところなんかもそうだ。例えばこんな歌「糸電話片手に渋谷ぶらついてこちら思春期はやく死にたい」。2024/07/24
kaizen@名古屋de朝活読書会
31
藤本玲未 短歌 学校をサボってたべるナポリタン紙ナプキンが水でふやける ここは海ここは空だと塗りつぶす青という字は青くないけど 半額の焼きそばパンを分けあって川辺にいない僕らになりたい あなたから生まれる前の夢をみた波打ち際の電話ボックス 点滴のそばに置かれたあじさいがぼくの代わりに月見をしてる 縁側で濃いめのカルピス飲み干した入道雲がゆっくりほぐれる オーロラのお針子たちとあんみつを食べる春はさっくり更ける 返歌 環天頂アーク水撒き光あて秋にみつ豆食べる幸せ2016/12/14
みねたか
10
平成元年生まれの歌人の歌集。初期の作品は、ひんやりとした校舎のにおい、後半は言葉の緊張感が張り詰める。/ご覧あの羊はそこで情死する夢をみながら無花果になる/ 暗礁としての龍骨仄暗い海辺で君と塞がったこと/ 図書館の隅にまどろむ犀の背で遠い晴夜の夢を見ていた/ 透明感、暗さ、静けさ、夢幻の世界、いろんなことを感じさせてくれます。2016/01/10
マコ
9
うーん、「良さげ」な歌ばかりなんだけど。。ニュアンスだけの歌とかあまりにも一瞬を切り取りすぎたりとか、ちょっとなーと思ってしまうところもあった。あと死と性を歌にすればなんでもOKじゃないと思うなぁ。でもタイトルは良かった。糸電話片手に渋谷ぶらついてこちら思春期はやく死にたい/となりあう木琴みたい教室の好きと嫌いに振りまわされて/関係者以外立ち入り禁止です永遠に内側にいなさい/そうやって春が来るのかありとあらゆる金色を味方につけて/しあわせな誤読をそっと差し出してあなたのことがわかる気がする2020/08/29
うさぎや
7
しゃりしゃりと削られ、きらめきながら溶けてゆく氷の欠片。そんなイメージが浮かんだ。瑞々しく、きらめいていて、すっと消えてゆくような。2016/01/01