内容説明
2004~2009年の作品。新たに発見された歌を含む395首収載。
著者等紹介
笹井宏之[ササイヒロユキ]
1982年8月1日佐賀県西松浦郡有田町泉山に生まれる。2004年短歌を作りはじめる。2005年10月連作「数えてゆけば会えます」で第四回歌葉新人賞を受賞。2007年1月未来短歌会に入会。加藤治郎に師事。同年度、未来賞受賞。2008年1月25日第一歌集『ひとさらい』(Book Park)刊行。2009年1月24日自宅にて永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コットン
69
やさしさの歌の中に自然に音を感じられる笹井さんの歌が好きだ:散る銀杏散らない銀杏それぞれの並木を縫いしエンジンの音 / 追い風に追い越されては追い付いてバトンを渡す春の真ん中 / 弓張の弓もて奏でん群青のコントラバスのような森林 / 人生はソフトテニスの壁打ちさ さうつぶやいて風にでもなろう2017/12/06
パフちゃん@かのん変更
64
『えーえんとくちから』の笹井さんの歌集。佐賀新聞に掲載されたものを中心に編まれている。新聞投稿の歌は本名で文語で書かれている。表題作は「八月のフルート奏者きらきらと独り真昼の野を歩みをり」でもこれは新聞掲載されなかったそうですが。方言で書かれた「冬ばってん浜辺の唄ば吹くけんねばあちゃんいつもうたひよったろ」もいい。「愛用の栞に付きし折り目より物語一行零れている」とか「廃品の中でひときはたくましく空を見上げてゐる扇風機」とかもいい。2016/05/16
kaizen@名古屋de朝活読書会
30
笹井宏之 短歌 君が差すオレンジ色の傘を伝うたった一粒の雨になりたし うっかりと踏んでしまった水溜り古里ぼんやり眺めておりぬ 香りしは白木蓮とミルクティーあなたの目蓋おろしつつ春 一枚であること一人であることの水泡此岸桜は流れ アスパラの冷えゆくシンク排水の果てなる海に嵐来るらん 逃げ水を追い掛けていし頃の事ふと汝が頬に語りかけたり p22 今は亡き祖母の歌いし南天の実は啄まれようやくの春 返歌 今は亡き祖母の植えたる千両と万両の実は正月飾り 2016/12/14
太田青磁
28
満月に彷徨える夢何処からフィドルの音は流れてくるか・まっすぐに走らせる赤クレヨンを唯一の筆とした日を思い・三日月の朝に結句が降るという予報みごとに外れいて晴れ・チェリストの弓は虚空を描きたり 最終音符に炎灯して・八月のフルート奏者きらきらと独り真昼の野を歩みおり・雨というごくやはらかき弾丸がわが心象を貫きにけり・少年よ大志いだかずとも人を愛せ 砂塵の吹雪く世界に・初恋のひとの背中を思いつつ紅葉降る坂道を下れり・たましひが器をえらぶつかの間を胡蝶ひとひら風に吹かるる2014/07/28
せんむ
22
繊細な言葉は、口の中でホロッとほどけながらも、とろみを持つ甘み苦みが喉を伝います。上手いとか凄いのカテゴリーには入れられない。歌集と言うより、言葉の結晶。2014/11/09