内容説明
古代天皇大嘗宮の移動に隠されたものは何か、天皇の宮と譲位した太上天皇の宮の関係はどうだったのか。古代天皇の代替わり遺跡を紐解き、古代王権の本質に迫る労作。
目次
大嘗宮移動論―幻想の議政官合議制
大嘗宮移動論補説
大嘗宮の付属施設
内裏改作論
二重権力空間構造論―並列御在所の歴史的評価
古代都城における帝国標章の浮沈
日本における都城制の受容と変容
老司式・鴻臚館式軒瓦出現の背景
正倉院正倉の奈良時代平瓦をめぐる諸問題
頭塔の系譜と造立事情
段台状仏塔の構造と系譜
蟹満寺本尊・薬師寺金堂本尊をめぐる諸問題―学説史的検討
著者等紹介
岩永省三[イワナガショウゾウ]
1956年、東京生まれ。九州大学文学部に学び、同大学大学院文学研究科修士課程修了。1981年より奈良国立文化財研究所勤務。2000年より九州大学総合研究博物館、教授。現在、九州大学総合研究博物館副館長、教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chang_ume
8
平城宮における大嘗宮移動と内裏改作について、天皇代替のたびに表象される王権の始原イメージと解釈。奈良時代を通じて「40尺」単位で大嘗宮の建設地が位置移動した状況を、元奈文研職員ならではの精緻な遺構解釈からの検討は、光仁・桓武の間で大嘗宮が位置移動しない例外とあわせて興味深いものでした。たしかに王権表象の何かが浮かび上がるような。ただ補説が章末に次々と付加されて、最終的な結論がなんなのか今ひとつ理解しにくいことと、大嘗宮移動と内裏改作を「呪術的」と評価する背景が正直ちょっとピンとこなかった。2020/11/17