内容説明
おれは見たんだ。太陽がゆっくりゆっくりゆっくりと緑色に変わっていくのを。そして黒い血が流れ出てくるのを…台北の浮薄な風景に傷の記憶のゆらぎをきく、新たな同時代文学への試み。
著者等紹介
胡淑〓[フーシューウェン]
1970年台湾台北生まれ。台湾大学外文系卒業。新聞記者、編集者、女性運動団体に専従した時期を経て、現在は作家活動に専念している。台北文学賞、時報文学賞などを受賞
三須祐介[ミスユウスケ]
1970年生まれ。立命館大学文学部教員。専門は近現代中国演劇・文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takizawa
5
現代台湾の持つ「クールさ」で著者にかどわかされ、「少しもクールでなく、目新しくもない貧者の生活へと引き込まれて」いた。彼らは口はあっても語れない。「ほんとうに辛い時には、心の奥底から汚い罵詈雑言を吐き出すか、だんまりを決め込むしかない」。「台北の街の現在の繁栄のなかに、いびつな存在や風景、あるいは現実という表層に現れたかさぶたを見出すのは、歴史の負債が未だ清算されないまま地下に葬られていることを敏感に感じ取っているからに違いない」が、そのいびつな現実は、見える者にしか見えない。2018/07/29
渡邊利道
3
台湾女性作家の小説で、トラウマを縦糸に性的逸脱(多様性)を横糸にして、人間の記憶と台湾の歴史が交差しながら織りあげられる、短編としても読める部分を緩やかにつないだ長編。性に関する思索はシリアスだが、全体としてはアドレッセンスの甘い切なさに満ちた青春小説の佳作。短編としては「チャーリー・パーカー」の章がすごく良かった。2019/02/07
ゐ こんかにぺ
2
台湾の都市と歴史と孤独2017/08/20