内容説明
一人の殺し屋が、前の月に殴り殺した男の幽霊に出くわす話。一人のチンピラが、空中浮揚できることを発見し、大騒ぎとなる話。一人の警官が、張り込みに飽きて、自分が容疑者だという空想にふける話。一人のギャングが、裏切った仲間を殺しにフェリーに乗るが、どうしても降りられない話。―職人芸の偽(フェイク)ノワール47本。
目次
1 ブーゲンビリア(ブーゲンビリア;張り込み ほか)
2 強盗のあとで(強盗のあとで;ピンクの夢 ほか)
3 ツキ(ツキ;馬たち ほか)
4 真夜中の街路(真夜中の街路;ゴキブリ ほか)
5 小さな波止場の情景(小さな波止場の情景;象牙 ほか)
著者等紹介
ユアグロー,バリー[ユアグロー,バリー][Yourgrau,Barry]
1949年、南アフリカに生まれ、少年時代にアメリカに移住。1980年代以来、「たのしい悪夢」とも言うべき奇想天外な超短篇小説を発表し続ける
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年生まれ。東京大学教授、翻訳家。季刊文芸誌『モンキービジネス』責任編集(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bugsy Malone
74
ギャングとその周辺の者達の、47話の短編集。ブクオフで見つけどんなものかも分からずにタイトルと表紙に釣られ第1話を立ち読み。ん?何だこの世界はと思い、続けて2話目も立ち読み。これはイケるとそのままレジへ。非情な世界で生きる頭の悪かろう奴らや運の無かろう奴らがシリアス且つコミカルに、シニカルな眼とペーソスを持ってあたかも映画のワンシーンの様に切り取られていた。面白いじゃないか、この作家さん!翻訳の文体も素敵だ。2017/10/04
ぺぱごじら
20
『奇妙な味』小説っていうんですかね、こういうの。昔だったら『南から来た男』とかありました。ただあちらはひたすら人間の暗くねとねとしたものを引きずり出していましたが、こちらは簡潔でクール。でも中々重いので、休み休みしながら読みました。短編集で良かった(笑)。バリー・ユアグローさんは初読でしたが、コアなファンが付きそうな感じですね。2011/03/27
田氏
16
「一人の男が飛行機から飛び降りる」を読み終えるとすぐにバリー・ユアグロー作品を買い漁り、その一冊にようやく手をつける。徹底した客観による、観察日誌にも似る状況描写の連続が相変わらずそこにある。掌編の殆どはギャングやチンピラ、悪徳弁護士など、裏社会の住人らを描いたもので、悪意に暴力、大きな力に抗えど流される無力感、救いようのない結末が彼らの血を伴って迸る。しかしそのいずれもが無機的な結晶になるまで感傷を圧縮されており、そこから得られる情動はむしろ時にコミカルですらある。"共犯者"の小粋な訳がその片棒を担ぐ。2018/02/12
たー
13
フィルム・ノワール短編小説版!?でもユアグローらしくちょっとユーモラス。2012/03/28
三柴ゆよし
13
シュールな奇想を主調に、哀愁と滑稽をスパイスした掌編の数々は、相変わらず読者を退屈させない。以下、お気に入りの三篇。「張り込み」。コルタサル「続いている公園」のオマージュか。淡々としているぶん、こちらのほうが怖い。「宣誓」。わずか500字ほどの掌編。笑った。「スイカヅラ」。「張り込み」もそうだが、ユアグローの主要なモチーフのひとつに妄想がある。閉鎖空間のなかで妄想を語る男と聞く男。偏執的なふたりの関係のキモチワルサ。そして結末の哀切感。ユアグローの掌編のなかでも最良のひとつだろう。2010/11/30