内容説明
死刑か無期か―。迷い、揺れ、悩み、6件の殺人事件を裁くく裁判員の胸の内。刑事裁判傍聴30余年のベテラン法廷作家が描く渾身の連作小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mashumaro
5
裁判員制度を通して、事件の判決がなされるまでを追っていくというスタイルの法廷劇は珍しかったです。民間人が裁判に関与する制度が始まってから判決内容に明らかな変化が見られるという事で、民意を通した「情」というものが深く反映されているという事であれば、この制度はとても意義あるものと思います。しかし裁判員になる事で人を裁くことへの責任の重圧は計り知れない。一生忘れられないと思う。2022/11/23
すなどけい
4
裁判傍聴を業とする著者が裁判員制度施行前にシミュレーション小説として執筆。題材は6編すべて著者が実際に傍聴した過去の事件。どれも思い当たる事件だったのも興味深かった。昭和初期の日本に30歳以上の男性で多額納税者のみ資格が与えられる陪審制度があったんですね。著者は現行の裁判員制度が刑事裁判のベストの形とは言ってないが、今まで裁判に縁のなかった一般市民が裁判官や検察官と渡り合うためには自らの判断が安易に流されない気構えが肝要だと考え、その辺りを盛り込んで描いている。短編なのが惜しいなぁと思う作品もあった。2017/02/08
ホン
1
裁判員制度が一昨年から始まった それに基づいた六つの事例が紹介されてる 裁判員に選ばれた人も当然いろんな職業の人がおり考え方も微妙に変わってくる「死刑か無期懲役か」または「死刑か無罪か」いろんな場面があり、それぞれに心の葛藤があるようだ 事例によっては裁判員自身の過去の経験と比較して判断する場面もある 作者は裁判員は義務でなく権利だと云ってるが仮に自分が選ばれて死刑を判断し実施されたとして その後の人生「あれで良かったのだろうか」とずっと考え続けるような気がする なるべくならなりたくない。2011/09/08