出版社内容情報
「私の身体はガラスでできている」
妄想――それはただの思い込みか、深刻な病か、
それとも、無限の想像力が編み出した究極の「生存戦略」なのか。
史実に見る、10の奇妙なケース。
「妄想」は当事者以外には奇妙でおかしなものだと思われがちだが、
過去の記録に注意深く目を凝らせば、驚くほど日常的で役立つことがわかる。
そこには実に巧妙かつ切実な、生き延びるための心理的作用が働いているのだ。
ファンタジックな世界への逃避に見えたとしても、本質的な意味においては逆で、
妄想とは、個人が現実世界と関わっていくための、必死の「戦略」なのである。
英BBCで10シーズン続いた人気ラジオシリーズ”A History of Delusions(妄想の歴史)”の制作者が、文化・社会・宗教・精神医学の観点から「妄想」を読み解く、壮大な歴史絵巻。
人間の歴史は、百花繚乱の「妄想」に満ちている――!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
109
まあまあかなあ。中世から近世あたりの主にフランスやイギリスなどで、文献などからわかっている妄想に取り憑かれた人々のエピソードを紹介していく一冊。地域やエピソードがかなり限定的なので、タイトルのように『世界史』と銘打つのはいかがなものかとは思う。あと、最終的にはクレランボー症候群の名前の由来になり、自身も最後は拳銃自殺したクレランボー氏のことでまとめられているので、ここに注目して読んでみたらまた印象が変わるかも。2023/03/19
くさてる
24
妄想に憑りつかれた人々の10の逸話を集めた内容。内容が入り組んでいるせいか、読みにくかったけれど、それぞれの患者が抱える妄想の内容と、そこに至った背景などは興味深かったです。2023/06/22
kitten
16
図書館本。なんか、頭が痛くなるような本だった。どこの時代にもおかしな妄想に取りつかれた人はいるんだけど、時代背景によって、妄想の内容はいろいろ変わる。だけど、妄想を生み出すメカニズムはそんなに変わっていない気がするな。今の自分の環境を認められないから、認知がゆがんでいくんだろう。これは、現代でも大いにあり得る話。ただ、当時は抗精神病薬とかなかったからな。今だと治療できる、ということもありそうだ。笑ってすむような話ではない。2023/05/28
紡ぎ猫
9
人間の脳というのは本当に不思議なもので、私たち凡人の想像の域を超えているというか。自分のなかに原子爆弾があると信じ切っている少女の場合、彼女を診た医師の所見は「核による人類滅亡への警告してわが身を変異させた」。いや、何でそうなるの???という感じだが、凡人にはわからない。2024/12/21
noko
7
フランス王シャルル6世がガラス妄想だった事(体がガラスで出来ていると思う)は知られているが、彼の治世は英国との複数の戦い国内の争いの鎮圧ばかりだった。20才の頃多分チフスで何週間も高熱に。それ以降、精神を崩している。仮面舞踏会で衣装に火が燃え移りそうになり、実際数人の男は燃えた。26歳一時的に家族の顔が分からない認知障害。ガラス妄想はこの頃から。当時ガラスは貴重で新技術。新技術が生まれるとそれに関連した信念を持つ人が出てくる。今なら5Gやスマートメーター等。複製のナポレオン現象も読む手が止まらなかった。2023/11/29