内容説明
源氏物語に散りばめられた数々の謎―。さまざまな仕掛けを解き明かすにつれて浮かび上る物語の奥深さ。恋物語であると同時に王朝政治をテーマにした源氏物語の二重性をあざやかに読み解く。
目次
桐壺帝とはだれか―「謎掛け」になっている書き出し
光源氏はいかにして帝王になるのか―謎解きの物語としての源氏物語
「雨夜の品定」の蘊蓄の出典はなにか―含蓄と辛辣な批評とが渾然一体となった談義
彼らはなぜ素姓を隠して愛し合ったのか―空蝉、夕顔との出会いと別れ
光源氏はなぜ朧月夜と密会を重ねたのか―光源氏の罪と罰
光源氏はなぜ須磨に下ったのか―わが身を菅原道真になぞらえる
予言はどのようにして成就したか―光源氏の政権の確立
光源氏の政権運営はいかに巧妙であったか―光源氏の人心掌握術とは
光源氏の子弟教育はどのようなものだったか―大学を復興し、社会に範を示す
光源氏はどのように正月を過ごしたか―光源氏の権勢を誇示する六条院〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Isamash
23
明治大学文学部教授日向一雅2008年出版著書。源氏物語のストーリーを18のQに対するA形式で解説し読みやすかった。とは言え源氏物語自体は昔に大和和紀の「あさきゆめみし」10巻で接したくらいなので多くの登場人物像がイメージしにくく、入門的映像作品でもあったらとは思った。中国と異なり天皇との血縁の濃淡で権力者が決まっていくのは何とも不思議。あと自分は物語自体よりこの大長編小説を創った紫式部自体と、物凄く傑出している様に思われる彼女が藤原道長の時代に登場した背景や要因に、強い興味があることを改めて自己認識した。2023/10/12
コニコ@共楽
15
友人のおススメ本。『源氏物語』を読んでいると登場人物が多く、その関係がわからなくなってきたりします。この本の中で興味深かったのは、「桐壺更衣の入内の謎が明らかになる」の章。明石一門の再興の物語として扱っているところ。桐壺更衣の父と明石入道は父は兄弟、つまり、更衣と入道はいとこ同士、光君と明石の君とは、またいとこにあたるわけで、入道は、娘の結婚に明石一門の再興を願ったという訳です。入道と更衣の父親の執念が明石の君の入内、皇子誕生に結び付いたのですね。それと各章にある源氏絵のカラー図版が美しかったです。2023/09/18
双海(ふたみ)
9
内容はふーん、という感じ。所々に挿入されている源氏物語の絵巻が大変美しいですね。2014/03/24
景
3
「雨夜の品定」の出典や「絵合」の元になった行事など、現代語訳を読んだだけでは分からないことが多かったので興味深く読みました。「「桐壺」巻で「長恨歌」の引用から始まった物語は、「幻」巻で「長恨歌」の引用によって物語を閉じた」という解説に目から鱗。そういえば女性は「いかまほしきは命なりけり」と詠んだ桐壺更衣の死から始まり、自ら死を望み入水したにも関わらず死ねなかった浮舟で終わるんだなあとしみじみ。2015/05/26
のん818
3
明石の入道が、なぜあれほどまでに皇位に執着したのか…。読み解いていくと、光源氏もただ踊らされていただけなのかも、なんて思ったり。2010/07/05