内容説明
ワルシャワの監獄に小さな手作りの日本人形が陳列されていた。いったい誰が作ったものなのか。謎を追ううちに浮び上ったのは、かつてヨーロッパでオペラ「蝶々夫人」のプリマ・ドンナをつとめて圧倒的な喝采を博し、その後、第一線から姿を消し、杳として行方のわからなくなった日本人歌手の幻影だった―。“幻の歌姫”を追って、六年の歳月をかけた探索行が謎の真相を浮彫りにする。
目次
泣いている日本人形
佐藤公使との出会い
遅すぎた発見
祖父はお雇い外国人
長崎の女 山口きわ
父と母
縁はめぐって
ミラノへの旅立ち
舞いあがる蝶
華麗なる羽ばたき
日本紹介の弁
ポーランド公演
ラヴィタ・プロショフスキ
秘密の部分
赤盤のレコード
夫との死別
質素な晩年
ニースに死す
著者等紹介
松永伍一[マツナガゴイチ]
詩人・エッセイスト。八女高校を出て中学教師8年、1957年以降文筆生活。文学・民俗・美術・宗教など広範囲にわたる評論で知られる。とくに子守唄・農民詩・キリシタン・古代ガラスの研究者として著名。『日本農民詩史』全5巻により毎日出版文化賞特別賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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paluko
7
ワルシャワの政治犯監獄で殺された女性の遺品の中にあった手作りの日本人形。そのモデルとなった、オペラ「蝶々夫人」の主役タイカ・キワというプリマドンナ。彼女は一体何者だったのか? と辿っていく糸の先に現れたのは日本人クォーターである喜波貞子(きわ・ていこ)というオペラ歌手だった。取材の過程で「事実は小説より…」のような出会いもあり、非常に興味深い一方で、著者の感情移入が過ぎてやや暴走気味に感じる部分もあり。「時代の非情な波にのまれて」というがプッチーニをヘビロテで歌いつづけたことも早い引退につながったのでは?2025/07/01
石橋
1
日本・明治生まれのクォーターがヨーロッパで伝説のプリマ・ドンナになった、と言う話。ヨーロッパでの活躍に比して日本では完全に忘れ去れていたという点とナチスドイツ・ユダヤ人迫害などとも絡められた点がとても興味深い。テレビ番組制作から生まれた作品だが、著者の思い入れが強すぎて憶測にすぎるところが目立つ。文章もなんだか変。2009/10/18