内容説明
これは偽の「黄金伝説」か?話芸の達人にして稀代の皮肉屋であったワイルドが友人たちに語った、あまりに文芸的な神話、説話、逸話のかずかず。あたかも牧神の歎きに似た非哀と甘美な雰囲気に充ちた掌篇集。
目次
第1章 嘘の真実(スフィンクスとキマイラ;弟子;モーセとファラオ ほか)
第2章 真夜中の福音書(二個の玉;蘇った男;善を為す者 ほか)
第3章 夢の宿(死者のサンダル;妖精と騎士;無駄な徳 ほか)
著者等紹介
堀江珠喜[ホリエタマキ]
1954年兵庫県西宮市生。神戸女学院大学文学部、同大学院修士課程で英米文学を専攻。1982年神戸大学大学院文化学研究科(博士課程)修了。学術博士号取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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20
ワイルドがサロンで友人たちに語り、演じて見せた彼自身による簡単な寸劇、コント集。しかし原稿があるわけではなく、彼のコントを友人たちが聴いて覚え、文字に起こしたものが集められている。つまり厳密に言えば彼の著作ではないが、彼の著作のように「ワイルドらしい感じ」を感じる事ができる。約30に及ぶこのコント集には、ワイルドの主要素である同性愛、またヘレニズムの影響や「大罪のように美しい」と言ってのける彼の退廃趣味などがコントであるが故に簡潔に現れている。多少書き手による揺らぎがあるらしいが、主題の書き漏らしはない→2015/04/12
刳森伸一
4
ワイルドがサロンなどで語ったコントを編纂したコント集。神話や伝説などをモチーフにした掌編で構成され、ワイルドらしい皮肉の効いた結末が楽しめる。もともとワイルドが出版目的に書いたものではないため、中には(ワイルドにしては)捻りが足りないものもあるが、それは御愛嬌だろう。2016/12/22
わたがしっし
0
「この世には二つの悲劇しかない。欲しいものが手に入らない悲劇と、手に入る悲劇である。あとの方がずっと恐ろしい。これこそ本当の悲劇である。」この文章が気に入った。手に入らないもので、ありつづける方がずっと美しいものが、この世にはたくさんあるなぁ。2012/12/24
津崎
0
ワイルドがサロンにて語った掌編(面白可笑しい劇ではない)の聞き書きを多数収録。おなじみのいかにも彼らしい趣味がよくあらわれており、かつネタ帖としても非常に興味深い。ファンなら必読。2009/10/26
そ
0
口頭で語られた話をまとめたものらしい。個人的に好みだったのは「知恵の師」です。 元ネタについてそれほど詳しくないものも多くあったので、元ネタを知っているがゆえの楽しみ方はあまりできていません。もっと色んなことに詳しくなってから再読してみるのも悪くないかも。2023/05/02