内容説明
意味は『論理学研究』において最も重要な課題であり、フッサールは意味を現象学研究における根本的な主題の一つと考え、その探求は現象学研究の歩みと共にあった。特に意味を時間という問題領域の中に捉えることにより、意味の最根源に至る道が開かれた。意味を時間との密接な関係、意味の様々な時間性を探求することにより、深化の道を辿ったのである。意味探求の独自性は、言語活動で遂行される意味作用と意味志向を充実させる直観作用との関連を通して、直観的意味と言語的意味の発生を捉えることにある。言語的意味の理解にとって重要なのは意味付与作用の相関者としての言語的意味という意味概念の導入と、名辞的作用に対し述定的作用の優位性の解明である。それでは意味は時間との関係のなかで如何に発生するのか。時間は意識によって構成される。ここでは能動的次元ではなく自我の関与しない受動的次元において、時間構成との関わりの中で意味の発生について考察され、言語的意味の生成が明らかにされる。次に時間的意味がどのように生成され、言語的意味はどのように遍時間的になるのかが問われる。直観的意味と言語的意味が発生する過程を経て、能動的な直観的意味や言語的な意味も受動的意味を根源として発生することが解明される。著者による厳密で周到な分析により、複雑な様相を呈する意味と時間の関係を明らかにした貴重な業績である。
目次
序論
第一部 静態的探究(スペチエスとしての意義;相関者としての意義―新たな意義概念の導入;相関者としての意味の時間性)
第二部 発生的探究(受動的次元を土台とする能動的次元における探究;受動的次元における探究)
結語
著者等紹介
高野孝[タカノタカシ]
1989年北海道大学大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了、1995年北海道大学大学院文学研究科哲学専攻博士後期課程単位修得満期退学、2018年博士号(文学)取得(東洋大学)。現在、東洋大学大学院非常勤講師・会社経営(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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