内容説明
本書は、北海道から本州へもたらされた細石刃石器群を中心とする製作技術と石材の分析を通じて、海峡を越えた旧石器人類が環境にどう適応したかに迫る基盤的研究である。前半では、細石刃石器群の由来である北海道の白滝型細石刃石器群を新たに検討し、再定義を行う。細石刃核にみられる擦痕に着目し、顕微鏡による観察や細石刃の剥離実験を通してその効果を明らかにし、北海道から出土した石器群の類型化を図る。同様に、本州の同石器群についても新たに類型化と再定義を試み、本州南下後に起きた湧別技法白滝型の変容をたどって、その機能が形骸化した様相を明らかにする。さらに両地域での石器生産システムについても考察する。後半は、近年発達著しい蛍光X線分析装置による原産地分析について、電子マイクロプローブアナライザーによるクロスチェックを行い、黒曜石製石器の原産地の変遷に光を当てる。最後に、白滝型細石刃石器群の年代特定により本州への南下時期と古環境との対応を探り、南下し拡散する過程で発生した石器製作技術や石材消費の変化を総合的にまとめる。基礎研究を通し、海峡をはさみダイナミックに変容する旧石器人類の活動を解明した意義深い貴重な業績である。
目次
第1章 東北日本の細石刃石器群と黒曜石原産地分析における研究史と課題(東北日本の細石刃石器群;北方系細石刃石器群の黒曜石原産地分析 ほか)
第2章 対象資料(北海道の札滑型細石刃石器群;北海道の白滝型細石刃石器群 ほか)
第3章 北海道の湧別技法白滝型に関する研究(細石刃核甲板面にみられる擦痕の微細痕跡的評価;白滝型細石刃にみられる擦痕の効果 ほか)
第4章 本州の湧別技法白滝型に関する研究(本州における湧別技法白滝型の変容;本州における白滝型細石刃石器群)
第5章 黒曜石製石器の原産地分析による石器石材研究(分析の方法;黒曜石製石器の原産地分析の実践 ほか)
著者等紹介
青木要祐[アオキヨウスケ]
1992年福島県生まれ、埼玉県出身。2021年、東北大学大学院文学研究科歴史科学専攻博士後期3年の課程を単位取得退学、2022年修了。博士(文学)。日本学術振興会特別研究員、新潟大学人文社会科学系助教などを経て、新潟大学人文学部学術研究員。日本旧石器学会2021年度若手奨励賞、日本文化財科学会2023年度奨励賞など受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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