内容説明
ヘーゲルはいかにして「哲学者ヘーゲル」となったのか。17・18世紀のさまざまな書籍や雑誌や新聞などかつては容易に見られなかった資料へのアクセス環境は、近年のデジタルアーカイブの整備によって激変した。本書は、これら多様な資料を活用することにより彼の同時代人の眼を手に入れ、ヘーゲルの哲学的経験や人間模様、さらに思想的交流を通じて生きたヘーゲル像を描く。従来のヘーゲル研究で常識・定見とされてきた事柄に検討を加え、新たなヘーゲル哲学の見方に挑んだ力作。
目次
第1部 哲学への旅発ち(少年ヘーゲルと解釈学のモチーフ;シェリングとチュービンゲン神学校での解釈学;「導入教育」と心理学―「精神哲学」への旅発ち)
第2部 ヘーゲル哲学の前哨(ドイツ観念論におけるスピノザ主義―ヘーゲルの、失われた「フィッシュハーバー批評」「ヘルダー批評」に照らして;一者の影―ヤコービによる「ブルーノからの抜き書き」の思想史的な意義について;自然と生命―シェリング『自然哲学の理念』に寄せて)
第3部 精神哲学の基底(自然の詩情と精神の忘恩―ヘーゲルにおける「精神哲学」と「自然哲学」との関係づけ;ヘーゲル『精神哲学』の基底と前哨;心の深処と知性の堅坑―ヘーゲル『精神哲学』の改訂を視野に入れ)
第4部 精神哲学の源泉(変容(Metamorphose)と進展(Evolution)
物語の内在化と心の表出―ドレスデン探訪に寄せて、ヘーゲルにおける絵画論の成立を考える
色と心―ヘーゲルによるゲーテの『色彩論』の受容をめぐって)
第5部 精神哲学の行方(「精神の現象学」と「精神の解釈学」―『精神哲学』において何故「心理学」が「精神の現象学」よりも上位に位置づけられるのか?;ヘーゲル『精神哲学』の豊かさとハイデルベルク)
著者等紹介
栗原隆[クリハラタカシ]
1951年11月新潟県生まれ。新潟大学人文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士前期課程修了。神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。学術博士。神戸大学大学院助手などを経て、1991年4月から新潟大学教養部助教授。新潟大学人文学部教授を経て、2017年3月新潟大学教授を定年退官。2017年4月から新潟大学名誉教授・学系フェロー。専門は、近世ドイツ哲学、生命環境倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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