内容説明
人文科学は「問いを立て、解答を導き出す」ことを目的に、解釈を通して多様な価値観と選択を通して最善の生き方を実現するものである。しかし今日、大学への進学の動機は、就職に有利、スキルの獲得、資格取得が主流である。客観的法則による自然科学の信頼と有用性が重視されるなか、解釈の曖昧さを伴う人文科学への信頼に応えるために、既存の知から飛躍する新たな「解釈」が期待される。それらの事情を踏まえ本書は人文科学の実践的な意義を問うものである。
目次
1 哲学における「解釈」のアクチュアリティ(解釈と科学的実在論―科学的実践の解釈学;「解釈」の問題系と「表現」の真理性―後期西田哲学を導きとして;実存についての解釈―我々は「誰」であるのか)
2 歴史学・文学における「解釈」のアクチュアリティ(山東京山著『教草女房形気』にみる江戸庶民の日常―草双紙を史料として解釈する;方言で解釈すること、それを伝えること;「医者と医者の妻」に潜在された人種、性、宗教の諸問題;英語教育における「解釈」についてのあゆみ)
3 社会学における「解釈」のアクチュアリティ(解釈的社会学の展開と課題;「腑に落ちる」としての解釈―古流武術への問いかけを事例として;ライフヒストリー・アプローチにおける「解釈」とは何か;読み手のテクスト解釈はいかに接近可能か)