出版社内容情報
「平家物語」を口演する藝能である〈平曲/平家琵琶〉は700年以上の伝統をもち,日本の〈語り〉の代表的存在で,室町期に最盛期を迎え,近世には浄瑠璃など語りものの世界に影響を与えた。
伴奏楽器としての琵琶は〈語り〉とともに弾かれることは稀で,数種類の曲節(ふし)の基本音を指示したり,語り手の音高を確認するために弾かれ,『平家物語』の「ことば」を大切に伝誦しようとする〈語り〉の本質に根ざしている。しかし琵琶が語りに従属するのではなく,高い音域から低い音域の2オクターブに及ぶ曲節を,琵琶を支えに語り手は進むことができるのである。
曲節は語り的・叙事的な部分と歌うような抒情的な調子の部分があるが,それらが語りと見事に調和して独自の世界を展開する。
著者は自身の実演活動を踏まえ,平家物語に特有な言葉遣いが〈語り〉を通して形成されることなど,平家物語の口誦性・音楽性に与えた影響を考察,音楽が文学にいかに創造的に関わったかその本質に迫る貴重な作品である。
第一部 〈平家〉演誦史と平曲・平曲譜本
第1章 〈つれ平家〉攷
第2章 平曲の〈本節〉と〈替節〉
第3章 譜本と語り
第二部 〈平曲〉と『平家物語』
第1章 〈三重〉とそのテキスト
第2章 〈平家〉的表現の成立
第3章 〈中音〉攷
第4章 郢曲と平曲・平家物語
第5章 平家物語と作詞法
鈴木孝庸[スズキタカツネ]
著・文・その他
内容説明
「平家物語」を口演する藝能である「平曲/平家琵琶」は700年以上の伝統をもち、日本の「語り」の代表的存在で、室町期に最盛期を迎え、近世には浄瑠璃など語りものの世界に影響を与えた。伴奏楽器としての琵琶は「語り」とともに弾かれることは稀で、数種類の曲節(ふし)の基本音を指示したり、語り手の音高を確認するために弾かれ、『平家物語』の「ことば」を大切に伝誦しようとする「語り」の本質に根ざしている。しかし琵琶が語りに従属するのではなく、高い音域から低い音域の2オクターブに及ぶ曲節を、琵琶を支えに語り手は進むことができるのである。著者は自身の実演活動を踏まえ、平家物語に特有な言葉遣いが「語り」を通して形成されることなど、平家物語の口誦性・音楽性に与えた影響を考察、音楽が文学にいかに創造的に関わったかその本質に迫る貴重な作品である。
目次
第1部 「平家」演誦史と平曲・平曲譜本(「つれ平家」攷;平曲の「本節」と「替節」;譜本と語り)
第2部 「平曲」と『平家物語』(「三重」とそのテキスト;「平家」的表現の成立;「中音」攷;郢曲と平曲・平家物語;平家物語の作詞法)
著者等紹介
鈴木孝庸[スズキタカツネ]
1947年秋田県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。同大学院文学研究科修士課程修了。神奈川県立横浜翠嵐高等学校教諭、新潟大学教養部専任講師などを経て、新潟大学人文社会・教育科学系(人文学部担当)教授。日本文学、口誦文藝論専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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