感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
毒兎真暗ミサ【副長】
30
迢空賞、前川佐美雄賞を受賞した本作はデビュー作『びあんか』よりもさらに、女の深みを抉る歌集である。彼女が読んでいたイタリア、フランス文学。その嬰児の憑依が垣間見られる美しき世界。自分の儚い人生を悟った上でなお、ダンテ、三島に憧れながら静かな炎でその身を焦がしている。退屈も苦しみも、妬みも悦びも。彼女が見て理解し濾過した【文学】と寝ることへの踏み台とし、華麗なステップを踏み続ける。気高き哀愁。フランスに憧れ、純潔な人柱を夢見て。その背骨を支えてあげようか……そう惑いながら、頁をめくる。2023/08/03
あや
22
読み進めるのに少し時間がかかりました。フランスを詠んだ歌が好きです。ロワールの古城は私も行ったことがあって、懐かしく読みました。いちばん最後のノートルダムを詠んだ歌がいちばん好きです。他にも触発されて自分も歌を詠みたくなるような歌もありました。2023/02/17
rinakko
5
〈鏡持つ人類さびし 鳥、けもの、石、夕燒も鏡見よ 狂へ〉〈うつそみをふかくおそるるくちなはに卷かれなばバベルの塔とならまし〉〈天地創造以前のぴあのぬばたまの闇の中よりショパン血を喀く〉〈薔薇科植物つどふ夕のささめきや永遠舞踏會われも入りたき〉〈かぐやひめアセクシャルなりき月の都自由なるらむ竹林のごとく〉〈中世の森のふかきにきのこたち会議せりけり魔女ならぬは誰(た)そ〉〈猫宇宙猫座猫星尾を立つる夜半(よは)か存在かたぶきゆくも〉〈帽子屋と時計屋いづれかなしきか朝の珈琲は少女を沈め〉2023/02/27