感想・レビュー
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Cell 44
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「億年の大黄昏(おほたそがれ)に入るべくぞ天地(あめつち)覆ひ混む血母衣雲(ちぼろぐも)」「蟲・草・木なかに臥(ころば)ひ覺えたる言の葉やまづ黙の言の葉」「あかねさす紫式部頭蓋より産みぬぬばたまの闇の黒太子(くろみこ)」「肉ー骨に 骨ー水に 水ー風に 無に ただに明るし 後生の時閒」中には愚直なまでの、荒く削られた柱のような無技巧の歌もあるが、それを含め人類史的な視点を持ったこの歌集の形而上詩群は、短歌には珍しいほどに叙事詩的な格調を湛え、個人的には連作のあるべき姿の一つとも映り、感銘を受けた歌集である。2016/01/19