目次
第1章 従軍
第2章 緒戦
第3章 レンベルクの戦い
あとがき 中庸の天才―クライスラーの藝術と生涯をめぐって
著者等紹介
伊藤氏貴[イトウウジタカ]
1968年生まれ。文藝評論家。明治大学文学部教授。麻布中学校・高等学校卒業後、早稲田大学第一文学部を経て、日本大学大学院藝術学研究科修了。博士(藝術学)。2002年に「他者の在処」で群像新人文学賞(評論部門)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syota
33
20世紀前半を代表する大ヴァイオリニストのクライスラーは、オーストリア軍中尉として第一次世界大戦に従軍した経験があった。本書は、オーストリア軍90万人中35万人が戦死した壮絶なレンベルク会戦での自身の体験を、冷静な文章で綴ったノンフィクションだ。榴散弾や偵察機など新顔の近代兵器が登場する一方で、馬に乗ったコサック兵が刀を手に突進するなど中世以来の古典的戦闘形態も残っていて、第一次大戦が古典的戦争から近代戦へと移行する過渡期の戦争だったことがよく分かる。最前線の実態を克明に描いた貴重な記録だ。2023/05/29
ののまる
7
クライスラーのバイオリン曲好きです。第一次世界大戦で闘っていたこと、戦後そのことで排斥されていたこと、音楽に占められず、政治に音楽を利用させず、「中庸」を貫いた人であったことを知った。2021/09/06
ミミ猫
0
第一次世界大戦の従軍記。ヴァイオリニストかつ、軍人でもあったクライスラーは、自ら志願して戦場へ。出征する兵士たちを英雄視する社会の戦争熱や、悲惨な戦場で人の死にも鈍感になって人間性を失ってゆく様子が、淡々と語られる、怖さ。一方で、塹壕越しに紡がれたロシア兵との人間的な友愛のエピソードは、救いかもしれない。 美しい旋律を作曲し、奏でたクライスラーの、唯一の著書。2023/04/28