内容説明
メタファーや言葉遊びなど多層的な比喩法を駆使し、また音楽的効果を意図して描こうとしたものは?たとえアブノーマルでも、私はこう愛す。根源的な母娘関係、男と女、社会の不条理と抑圧を並はずれた言葉への情熱で描いた長編小説。ノーベル賞受賞作家のベストセラー、映画化され2001年カンヌ国際映画祭でグランプリ。全面改訳、新訳版。より深く味わうために充実した注を付す。
著者等紹介
イェリネク,エルフリーデ[イェリネク,エルフリーデ] [Jelinek,Elfriede]
1946年生まれのオーストリアの作家。その創作活動は、小説、演劇、ラジオドラマ、映画のシナリオなど幅広い分野に及ぶ。評論や政治批判も数多く書き、オーストリアの戦後処理の問題やその保守性を批判し、また極右政党ときびしく対峙する作品を発表し続ける。およそ24回文学賞を受賞。1998年にはゲオルク・ビューヒナー賞、2004年にフランツ・カフカ賞、2004年にノーベル文学賞を受賞している
中込啓子[ナカゴメケイコ]
東京都生まれ。東京大学大学院独語独文学修士課程修了。大東文化大学名誉教授。エルフリーデ・イェリネク研究センター(ウィーン大学内)海外委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まふ
106
なかなか手ごわい小説であった。「」の会話体がなく文章がどこか読みにくく、頭にすっと入ってこない。「脱構築」を目指した作品だという。ウィーンを舞台にしたピアニストの女性と10歳年下の学生との恋愛物語であり、バッハ、ベートーヴェン、ブラームス、モーツアルト等々、作曲家たちを話のツマにつするのは好ましかったが、意識の流れなのか、妄想、幻想、観念などの混乱状態なのか、最初から最後まで未解決のまま終わってしまったのか。冗語が多すぎてホネの見えないまま物語は終了した。G1000。2024/02/09
Mark.jr
5
映画化もされた、著者の小説の中で一番知名度の高い作品なります。ハネケの映画版は非常によく出来ており、忠実かつ的確に本書の中核を映画に移し込んでいますが。それでも、このメタファーと猥雑なイメージが凝縮された文章のインパクトは、一読の価値があります。時折、文章が暴力的にすら見えるのが、女性という立場がいかに軽視されているのかが透けて見えますね。2025/05/26
Э0!P!
0
正直めちゃくちゃ読みづらい。婉曲、皮肉、性悪説的な表現のオンパレードなのと、地名が集中的に出てくる箇所が散発的に出てくる。 プロレスのように、エリカという人間が、母とクレマーによって、対極的に描写されている。音楽とスポーツを纏い戯れるエリカとクレマーのやりとりは、神話的でもある。光り輝くクレマーは、男性性と暴力、壮健の神でもあり、一貫性と怒りをもって性愛をなす。一方、エリカは...?卑屈でアンビバレントなこの女性は、クレマーに破れた後、どこへ向かうのか。ラスト直前の加速感のまま飛び去っていく。2021/10/19