内容説明
インドの原始仏教から日本の浄土教や禅までを西洋哲学やキリスト教との比較など縦横に論じ尽くす。ハーバード大学公開講演の邦訳。
目次
第1章 “普遍”宗教
第2章 仏教の道とキリスト教の道
第3章 人間的状況の診断
第4章 仏教とキリスト教の治療法
第5章 教団
第6章 禅仏教
第7章 浄土仏教
第8章 東洋における近代思想の夜明け
著者等紹介
中村元[ナカムラハジメ]
1912年島根県松江市に生まれる。1936年東京大学文学部卒業。東方学院長、東京大学名誉教授、文学博士。1999年逝去
春日屋伸昌[カスガヤノブマサ]
1920年東京に生まれる。1943年東京大学工学部卒業。法華会理事長、中央大学教授、工学博士。1990年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
7
本書は「理性」の解釈について仏教とキリスト教を対照し、その類似と相違を歴史の中に展開する。仏教は初期から理性的であり、ローマの国教化で哲学が流入するまでのキリスト教はそうでないと著者は言う。前者は「理法」(ダルマ)を探求しそれに従う点で、孔子の「道」の普遍的な人間の行動規範に類似する。一方、後者はキリストを通じた神の信仰とその教義を重視する構造から、理性を人間世界から分離する。前者は人間を含む行動規範が理性の限界を示し、後者は神の理性において信仰を強化する。他方、歴史の過程で両者が交差する場面も出てくる。2021/04/19
じゃくお
2
仏教を代表とする東洋思想とキリスト教を代表とする西洋思想を比較して考察した本です。講演での内容を書籍化した内容であるため、ややわかりづらい点が多かった。中村元が執筆した膨大な著作の中で入門的な本になっているとのことだが、東西の思想に関する前提知識をを必要としている。その一方では比較による考察を抑えて基礎知識の紹介に紙幅を割いている箇所もある。西洋思想と東洋思想の比較を中村元が行うという非常に興味深い本ではあるが、現状としては読解が難しい点が多く、もう少し知識を熟成させたいところです。2020/04/26