内容説明
人間はだれしも必ずオギャーと生まれたその場所に帰る。人生の後半に差し掛かったときに気づくのは、そのことだ。公的な生活での順調な思いとは別に私的な生活での判断の誤り、失敗の数々。だが、まぎれもなく、それが著者の本当の姿だ。亡母の溺愛、そして疎開生活での過酷ないじめ。それらが自分の人生にとって、「愛の不能」と「対人恐怖症」をもたらしたことに今さらながら気づく。あらゆるものになれたはずだがこうとしか生きられなかったことを洗いざらい、正直に書いてみよう。「戦前」と「戦後」を生きた保守派論客が赤裸々に綴る痛恨の半生。
目次
「至福」の幼年時代
「秘境」匹見
ピアノと神経症
サルトルかハイデッガーか
ロレンスかエリオットか
岩波映画の二年間
都立大学大学院
愛のなかった結婚
文壇デビュー
大学紛争の中で
ロンドン大学東洋・アフリカ学部
日本文化会議
父と母の晩年
行き交わった人々
オーストラリアの一年
ためらいがちな信仰への道
著者等紹介
入江隆則[イリエタカノリ]
昭和10年(1935)神奈川県生まれ。京都大学文学部英文科卒業、東京都立大学大学院修了。岩波映画社員、明治大学教授、ロンドン大学東洋・アフリカ学部客員研究員などを歴任。現在、明治大学名誉教授。戦後処理の問題を世界史的文脈で論じた『敗者の戦後』(平成元年、中公叢書、のちにちくま学芸文庫)を引っ提げ、戦後論争の論客に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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