自主独立農民という仕事―佐藤忠吉と「木次乳業」をめぐる人々

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  • サイズ B6判/ページ数 209p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784862380302
  • NDC分類 641.7
  • Cコード C0095

出版社内容情報

「町づくりだの村おこし、地域の活性化とさわいどりますが、地域は活性化する必要はない。むしろ鎮静化すべきだと思うとります」――佐藤忠吉語録

佐藤忠吉さんは島根県木次の「木次(きすき)乳業」を始めた人である。日本ではじめてパスチャライズ牛乳の販売をはじめ、60年代から有機農業に取り組むなど、新しい農業のあり方を模索してきた。
野菜や生乳など、素材の生産だけでなく、その素材を加工し、流通までも自分たちでできなければ、農民は都市の奴隷になってしまう。自分たちが健康でなければ、まともなものを作ることはできない。そんな使命感と危機感をいだきながら、自分の夢をカタチにしてきた。
今は仲間をつのって、葡萄園やワイナリー、パン屋、豆腐屋など、その土地で取れたものを加工して販売するゆるやかな共同体、「食の杜」を立ち上げている。美しく、新しい農村を夢見て、佐藤さんの「農」をめぐる挑戦は続いている。

内容説明

草の匂いのする牛乳や山葡萄の香り高いワイン。健康な野菜にホンモノの卵。島根県木次は滋味に満ちている。目指すは、「地産地消」。60年代から有機農業に取り組み、日本で最初にパスチャライズ牛乳の販売を手がけた酪農家の言葉。

目次

1 エメンタールチーズ作りを見にいく
2 出雲というところ
3 オヤジ、佐藤伝次郎のこと
4 兵隊の話
5 大坂貞利という人
6 パスチャライズ牛乳のできるまで
7 茅葺き屋根での炉辺談義
8 風土プラン―自給のためのゆるやかな連携
9 自給自足の忠ちゃん幼稚園―再び出雲へ

著者等紹介

森まゆみ[モリマユミ]
1954年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。作家、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』編集人。著書に『鴎外の坂』(新潮社・芸術選奨文部大臣新人賞)、『「即興詩人」のイタリア』(講談社・JTB紀行文学大賞)など多数がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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やすらぎ

106
木次乳業創業者、木次忠吉氏の自伝。1920年生まれ。戦前日本、戦争体験、戦後を語る。石油石炭燃料に変わり、中山間地の主要産業、薪木炭の需要が減った。 耕作労働の担い手も減り、和牛も和紙も養蚕も駄目、3人で酪農を始めたのが1953年。生産だけでなく加工から消費者に届ける夢があった。工場の全焼、盟友の死を乗り越え、いち早く安全性を研究。子どもたちに美味しい牛乳を届けたい。でも、赤ちゃんには母乳を…。人生は愛しい。難儀を乗り越えたことが一番の生き甲斐。失敗のない人生は失敗である。かなりの読書家であり優しいお方。2021/01/17

アキ

82
木次乳業は島根でブラウンスイス種を基に日本の草を飼料として山地酪農を実践している。1961年農業基本法から食べ物が工業製品化していったのは、アメリカの安い穀物を利用し、乳量の多い牛を利用するコスト主義が蔓延したからだと創業者・佐藤忠吉は語る。1978年63℃30分殺菌の低温殺菌牛乳を日本で初めて「パスチャライズ」という名称で売り出した。地域で完結する農業、地域自給によるリサイクルを目指している。大量生産し安く売るのは都市市民迎合型と手厳しい。自主独立農民という生き方が、これからの時代にどう響くのだろうか。2020/09/17

むつこ

16
島根の酪農家(佐藤忠吉)さんへのインタビュー本。今まで大手の牛乳を購入していれば間違いないと思っていた。しかし、その土地で生産している小さいながらも肩を並べて陳列しているものを飲もうと思う。土が違えば味も変わる、当たり前なことだった。道の駅などで盛んに販売していたのもうなずける。地産地消、牛乳もその一つと改めた。2014/11/08

ロータス

4
「人間が生きているということ自体、殺生ですわ。牛や豚を殺して肉を食べ、魚を獲って刺身を食べ、米も麦も野菜も植物ですが、命あるものであることに変わりはない。何か食べればすべて殺生です」。この、植物にも命があり、植物を食べることも殺生だと語る佐藤忠吉さんを素晴らしいと思った。乳業を営んでいながら「基本的に人間に牛乳は不要なんです」と言ってしまうところもすごい。地域自給と地産地食を理想とし、アメリカ主導の大量生産大量消費農業のあり方に疑問を呈す。やはり生き方に信念と哲学のある人は強いし信頼できる。2020/01/29

野々村 聡

1
★★★★ 立ち読みでざっくりと。 島根の雲南市のかつての状況➡️木次乳業への経緯が書いてある。佐藤忠吉さん(だっけ?)の話が語り部みたいで非常におもしろい。おもしろい切り口、新たな一面から地元を見られるのはとてもおもしろいように思う。2019/07/05

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