内容説明
二〇〇一年夏、パキスタンにいる友人から一本の電話がくる。この電話回線の先にあるのは、わたしの過去、まだ償いの終わっていない罪…。電話を切る直前、彼はふと思いついたようにいった。「もう一度やり直す道がある」小さい頃、わたしは召使いであるハッサンとよく遊んだ。追いかけっこ、かくれんぼ、泥棒ごっこ、そして凧あげ。わたしはちゃんとした学校へ通っていて、読み書きもできる。しかし、ハッサンは世の中の「真理」をすべてわかっているようだった。真理とは、愛や慈悲、そして罪、というものについてだ。十二歳の冬の凧合戦の日。ついにそれが起こる。記憶の底に決して沈めてしまうことのできない罪…。他人を救うことの困難さ、友情、愛、畏れについて深く考えさせる、アフガニスタン出身作家の鮮烈なデビュー作。
著者等紹介
ホッセイニ,カーレド[ホッセイニ,カーレド][Hosseini,Khaled]
1965年、アフガニスタンの首都カブールに5人兄弟の長男として生まれる。1980年に家族と共にアメリカへ亡命。現在、妻と二人の子どもと共にアメリカに暮らす。『カイト・ランナー』(アーティストハウスパブリッシャーズ刊)がデビュー作
佐藤耕士[サトウコウジ]
1958年生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🅼🆈½ ユニス™
68
分厚い本を読み終えるまでそんなに時間はかからない。主人公アミールが大人になりながら得る痛みとアフガニスタンの現実が人生の挑戦状のように広がり、更に読者の幼年時代と重なり読書に嵌まり込む。久々に溺れて読んだ '生々しく魅力的なキャラクターでいっぱいの’ 壮大なスケールの成長小説だった。★5❗️2020/05/17
豆ぽち
18
Zendagi Migzara. それでも、人生は進むんだ。2017/02/19
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
17
アフガニスタンで裕福な家に育った少年の半生。親友を裏切り、それまでの自分とは違う自分になり、罪の意識と共に生きる。ソ連が占領したアフガニスタンからの過酷な脱出。貧困。親友の少年もアフガニスタンで、北部同盟軍、ソ連、そしてタリバンに蹂躙されながら過酷に生きる。裏切りの罪もひどいが、このアフガニスタンに対する軍、ソ連、タリバンの罪は途方もなく酷い。ここまで残酷になれるのか、という惨い出来事が続き、それに轢き潰されるかつての親友。ガザやスーダンも、タリバンが支配しているアフガニスタンも何とも無惨な時が流れている2025/03/31
星落秋風五丈原
17
【ガーディアン必読1000冊】アフガニスタンで育った裕福な男の息子と、その召使の息子。二人は身分差はあれ親友としてつきあっていたが、ある時を境にして亀裂が入る。激動のアフガン情勢を縦糸に、主人公の贖罪の物語を横糸に描く。「君のためなら千回でも」というのは、どうやらアフガン人特有の決まり文句のようだ。最初は主人公の友人・ハッサンだけの決まり文句かな?と思っていたが、後半に別の人物がやはりアミールに頼みごとをされて「あんたのためなら千回でも」と言うのだ。2013/09/27
くれの
10
友情と後悔そして贖罪。それら全てを無にしてしまう戦争の絶対悪が許せなかったです。「わたしは走った。」その最後の一文に二人の凧追いの姿が重ね合わされ涙が溢れてきてしまいました。美しき中東文化の復興を願って止みません。2019/09/16