出版社内容情報
<ナチ政権下、ホロコーストは如何にして「国民的事業」に成りえたのか。従来のナチ恐怖説、歯車説、状況説などと違うアプローチで捉えた、ナチ研究の新しい地平。>
「『ナチの良心』というのは矛盾した言い回しではない」という一文ではじまる本書は、当時のドイツ人が実際に信じ、ホロコーストを実施するための基盤となった道徳体系が如何にしてナチ社会によって構築されたかをみごとに解き明かしている。それはヒトラーやナチ党のみではない。ドイツ国民自体が、当時の学者や官僚、教育者などの知的エリートの煽動に乗っかり、「民族原理主義」に完全に浸っていった結果として、その実行者となっていったプロセスでもある。
ドイツ全体を覆ったこうした「異質な隣人」=悪という「民族的純血」の信仰の前に、ユダヤ人は排撃と抹殺の運命にさらされていくのである。本書は今日形を変えて吹き荒れる「民族原理主義」を中心テーマとした、ナチ研究の最前線であり、到達点である。
目次
プロローグ 民族の血統を信仰する―その意識の形成
1 民族原理主義へ―血統の正義と良心
2 フォルクに寄せる無限の信頼―道義の政治
3 学問ふうの反ユダヤ主義―学界の味方
4 ひそかに進む日常生活の変容―政治文化の征服
5 フォルクという血の大河―民族の再生と人種主義者の懸念
6 新しい教科書の登場―少年の心に刻むカギ十字
7 官僚たちの迫害手続き―法と人種秩序
8 大量虐殺を用意する学者たち―体裁のととのった人種主義を求めて
9 「隣人愛」という大罪―人種の戦士たち
10 排除を受入れた国民―銃後の人種戦争
著者等紹介
クーンズ,クローディア[クーンズ,クローディア][Koonz,Claudia]
デューク大学歴史学教授。コロンビア大学で修士課程修了後、ラトガーズ大学で博士号取得。専門分野は人種主義、ジェノサイド、ジェンダー。狂信者の主張より一般市民の間にみられる偏見、差別を研究テーマとしている。1987年度全米図書賞ファイナリスト他、数々の賞を受賞している
滝川義人[タキガワヨシト]
前イスラエル大使館チーフインフォメーションオフィサー、現メムリ(中東報道研究機関)日本代表。早稲田大学第一文学部卒業、ユダヤ、中東研究者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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