目次
1 二〇〇七年(二月~十二月)(机;風とマルス ほか)
2 二〇〇八年(仮面;耳 ほか)
3 二〇〇九年(二〇〇九年一月、二月;虫歯 ほか)
4 二〇一〇年(一月~二月)(パブロ・ピカソの眼光;光る目 ほか)
著者等紹介
花山周子[ハナヤマシュウコ]
1980年5月東京生まれ。1999年塔短歌会に入会。2007年第一歌集『屋上の人屋上の鳥』(ながらみ書房)刊行。2008年第十六回ながらみ書房出版賞受賞。現在、塔短歌会、同人誌「豊作」、(sai)に所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はち
5
再読。初読のときよりもすっと入ってくる歌が多い。実景もあればあからさまに空想で詠まれた歌もあり、通して読むと一筋縄ではない歌集だが、物事の奥の真実を見ようとする姿勢はどのように詠まれた歌でも一貫しているように思える。それは作者自身が絵を描くから、という部分もあるだろう。まるで美術館を巡るように読んだ歌集だった。2015/12/26
はち
4
とても個性的な装丁、そして中身もとても個性的。花山さんの第二歌集。去年発売の歌集だが、収録されているのは2007年から2010年の初頭まで。あとがきにもあるように、まとめるのはかなり難航したようだ。その代わり、中身はとても濃い。「交差点に立たされているかなしみの歯が浮くような寒さだ春は」なんてまさに今日にぴったりである。2015/03/03
Kaoru Murata
3
花山さんは、芯の通った、心の強い方。お子さんを産んでからますますそう思う。/傘させば雨は明るさもちて降るさくらの青にけやきの青に/ゆらゆらと煙草を吐けば黄昏のベンチにわれの思考隠さる/眼球を撫でゆくように雨が降る九十九里浜広い砂浜/手の甲に蚊をつぶすとき蚊の眼(まなこ)つぶっただろう白い感触/私には関わりのなき青空に関わりもちて鴉がわたる/わが脳に静かに夢を紡ぎいる自給自足の時間を愛す/風吹けど吹けど葉が散り凛と立つ君の思考を炙(あぶ)り出しおり/相聞歌、われを想いて詠いいる君のぶんまでわれがつくりぬ2015/04/16
yumicomachi
2
〈丸太のような君が握りし細き筆からすを描いてくれにけるかも〉のように大仰な万葉調がでてきたり、〈さくらんぼの原価についてあらゆる知識を道員して語りくれしタクシー運転手〉のような大幅な破調があったり、〈秋の陽を帽子のつばに遮ってマイ・フレンド靴の先を見ている〉のように唐突にカタカナ語が挿入されたり。口語と文語のバランスもちぐはぐだし、内容も大真面目なのに何か過剰で変なのだ。いわゆる普通の秀歌を書こうとすれば書ける著者なのだと思うが、それをしない。かと言って計算とも違う。不思議な第二歌集。2014年11月刊。2022/11/15
浦和みかん
0
歌集についてうまくまとめられないので、後に引いた好きな歌について書くと、一首目は「感覚」という漢語が、二首目はリズムと結句の転換が、三首目は(喉を)「うらがえす」というイメージの強烈さがそれぞれ特徴と思うけど、歌集の印象もまたこれらの歌の特徴の集合のようにも思う。敢えて書くなら、自身の行為に対する視線が冷静であるか。 <手の甲に蚊をつぶすとき蚊の眼(まなこ)つぶっただろう白い感触><どの人も遠くにいる君だけが遠いわけじゃないこの部屋が好き><蟬の声充ちてしずかに君の喉、喉うらがえすように水飲む>2019/01/15