出版社内容情報
広大な大洋と島々を血に染めて戦われた日米の激戦。日本軍はなぜ敗れ、米軍はなぜ勝ったのか。物量のみではなかった戦いの実相。
「島嶼防衛」の歴史を紐解くとき、現在の安全保障へと結びつく教訓が甦る。
本書は、個々の島々の戦闘のみを注視しない。始まりから終わりの流れ、「作戦」の意図とその経過、そして戦いが他の戦いや地域に及ぼす影響を俯瞰。“全体”の流れの中に島嶼戦を位置づける。
内容説明
広大な大洋と島々を血に染めて戦われた日米の激戦。日本軍はなぜ敗れ、米軍はなぜ勝ったのか。物量のみではなかった戦いの実相。
目次
序章 大洋を挟んだライバル
第1章 手探りの初戦―ウェーク島とミッドウェー島
第2章 ガダルカナル島とソロモン諸島キャンペーン
第3章 アリューシャン戦役
第4章 東部ニューギニア戦
第5章 「Z作戦」と米軍のマーシャル・バリヤー突破
第6章 玉砕の島サイパン
第7章 海上機動反撃の挫折
第8章 レイテ決戦
終章 島嶼戦という「新しい戦い」の構造と教訓
著者等紹介
瀬戸利春[セトトシハル]
1962年、東京都生まれ。戦史研究家。東洋大学文学部史学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
16
太平洋戦争において日米が戦った「島嶼戦」を作戦レベルで解説した一冊。太平洋に点在する島々を海陸空の一体運用で取り合う戦いは、日本軍が構想してきた戦場とは異なり、想定外の事態に翻弄される様子が描かれる。逆に米側は戦前のオレンジ・プランの時点で、南太平洋の島々での戦いを想定しており、陸海軍そして海兵隊の連携も早い時点で実現しているなど、その違いは歴然。よく補給や物量の差が勝敗を分けたといわれるが、その差が無かったとしても、日本軍は無理だったんじゃないかという救いのない感想を抱く。色々と足りてないのである。2021/07/17
dongame6
6
「太平洋島嶼戦」は、ソロモンならソロモン、ニューギニアならニューギニアを一連の戦役「キャンペーン」としてとらえる形で書かれており、個々の戦場について事細かに描かれてるわけではないが「何故そこが戦場になったのか、何故その進撃路が(主に米軍に)選ばれたのか」が分かりやすく書かれており、また「日本軍が敢闘出来た戦場と出来なかった戦場の違いは何か」が準備段階から語られてるので個々の戦場を繋いで解釈するのにとても良かった。日本軍の海上機動反撃構想も興味深かった。2020/12/23
hurosinki
5
太平洋戦争をその地勢に着目し、連続する島嶼戦の複合として全体像を描く。海戦は島嶼戦に付随した形でしか起きてないためこの戦争では副次的なものとみなしうる。大規模な陸上戦力は輸送船を介してのみ島嶼へ機動・維持できるので、海上輸送能力が島嶼戦の最も重要な要素である。本書は細かい戦術的な事象を捨象するが、それゆえ輸送能力という表に出にくい構造的条件が島嶼戦を強力に規定したことが分かりやすい。輸送能力が高い側は海洋を利用して陸上部隊に高い機動力を付与できた一方、低い側は陸上部隊の島嶼への集中が困難になった。以下蛇足2021/01/17
デューク
4
「大洋を主戦場とする戦争は、太平洋戦争が史上初で唯一のもの」。そう語る筆者による、日米の水陸両用作戦の記録。 広い太平洋を舞台に戦われた太平洋戦争。そこでは基本的に島々を巡る戦いであり、陸海空の戦力の統合的な活用が勝利のカギとなる戦いであった。日露戦争後の日米両国の戦争計画の違い、ガダルカナル島で戦艦が主役になれなかった理由、日本軍が逐次輸送をせざるを得なかった事情、フィリピンの戦い以降に日本海軍が出てこない理由、などなど。島嶼戦を作戦レベルで解説した良書。おすすめ2021/11/28
竜王五代の人
2
「太平洋」戦争という、大洋の中で島々を奪い合う戦いを理解させてくれる良著。そもそも海を経て戦力を送り込まないと、送り続けないといくさにならないから輸送能力(世界第三位の商船保有量を誇った日本でも足らなかった!)が大事だし、制空権を保持していないと現場に送り込めない。とはいえそれは基本中の基本(で、日本軍はどうもそこが分かっていなかったあたりが悲しい)で、その上に立つ戦役という概念や島と航空基地と言う戦場の特徴も分かっていないところが更に悲しい。2022/05/06