内容説明
デビュー作『楽園のこちら側』と永遠の名作『グレート・ギャツビー』の間に書かれた長編第二作。刹那的に生きる「失われた世代」の若者たちを絢爛たる文体で描き、栄光のさなかにありながら自らの転落を予期したかのような恐るべき傑作、本邦初訳!
著者等紹介
フィッツジェラルド,F.スコット[フィッツジェラルド,F.スコット] [Fitzgerald,Francis Scott]
1896年生まれ。20世紀前半のアメリカ文学を代表する作家。1920年、24歳のときに『楽園のこちら側』でデビュー。若い世代の代弁者的存在となる。同年、ゼルダ・セイヤーと結婚。1925年には20世紀文学を代表する傑作『グレート・ギャツビー』を発表した。しかし、その後は派手な生活を維持するために短編小説を乱発し、才能を擦り減らしていく。1930年代後半からはハリウッドでシナリオを書いて糊口をしのぐ。1940年、心臓発作で死去。享年44
上岡伸雄[カミオカノブオ]
1958年生まれ。アメリカ文学者、学習院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
134
読んでいるこちらがつらくてたまらなくなるような痛々しさ。ドストエフスキーの『賭博者』を読んでいた時のような。そして、『ギャツビー』と『夜はやさし』の間にかかれたこの長編が今まで訳されてこなかったのがわかる気がした。お金や名声が欲しくて、持つ側の人が羨ましくて、その欠片をせっかく手に入れても、自ら潰してしまうような作者の酒臭い息が、行間から匂ってくるようだった。2019/08/17
星落秋風五丈原
22
フィッツジェラルドが人気絶頂の時に自分を予見したような主人公の転落を描く。2025/05/22
のれん
18
フィッツジェラルドは日本で言えば太宰治に近いと感じた。高慢な自信家であると同時に、怠惰であることを隠さない。 彼は自分の愚かさを常に客観視していた。愚かさとは、腑抜けた浪費であり、若さにかまけた無謀さであり、自らも衰えることを知らないことである。 アンソニーの魅力は金しかなく、グロリアの魅力は美貌しかなかった。 貴族に足りえるのは金や美貌は当然でその上で美学が必要だ。若き米貴族はそれを「滅びの美学」で補った。しかしながら散り際まで醜いのは頂けない。やっぱり愚かもんやね。2022/11/20
erierif
14
大金持ちの祖父を持つアンソニー。教養もあり趣味も良く育ちの良さを漂わせている。女性ともうまく付き合っているがある日友人のいとこにあたる美女グロリアに巡りあう。恋に落ちた日々の美しいこと…フィッツジェラルドの華やかで退廃的でゴージャスは文をたっぷり堪能した。しかし、当初からアンソニーに虚無とグロリアに傲慢さを感じどこかこの美しい日々のかりそめの感じが切ない。やがて倦怠の日々。そして…フィッツジェラルドの胸を引き裂かれるような悲しみの描写がアンドリューの人生を容赦なく描いていく。2019/06/19
ソングライン
12
友と夢を語り、自分の才能と美しさを信じていた青春の時はいつか終わる。しかしその夢を見続けたら優柔不断と後悔の恐ろしい悪夢に変わってしまう。大学を卒業し仕事をせず父母の遺産で暮らし大富豪の祖父の遺産を相続することを目論むアンソニー、自分の美しさに酔いやがて訪れる老いに怯える傲慢な美女グロリア。結婚した二人はパーティに明け暮れ父母の遺産を浪費して行きます。相手のために生きることのできない二人は底辺の生活まで転落していきます。底なし沼に沈んでいく青春に何とも言えない虚無を感じるのです。2024/02/05