出版社内容情報
宇波彰[ウナミアキラ]
内容説明
忘れられてしまった夢こそ、「解釈」の最高の材料である。ラカンの「思考」から汲み取られ、紡がれる思想の可能性と“力”。いまだ刊行中である膨大な講義録「セミネール」を読み解き、断片、痕跡、残滓、忘却から存在の豊饒さを救い出す。フランス現代思想研究の先駆者である著者、畢生のライフワーク、結実。
目次
第1章 あなたは存在しない
第2章 心と身体
第3章 かたちが意味を作る
第4章 他者の欲望
第5章 解釈とは何か
第6章 あとから作る
第7章 反復は創造し、破壊する
第8章 像と言語
第9章 コレクション
第10章 フィルター・バブル
著者等紹介
宇波彰[ウナミアキラ]
評論家・明治学院大学名誉教授。1933年、静岡県浜松市に生まれる。東京大学大学院修士課程修了(哲学専攻)。評論家。明治学院大学名誉教授。現在、フランス現代思想の翻訳・紹介を中心に幅広い分野で評論家として活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
68
ラカン入門と思い借りるがはしがきで著者はこれはラカン入門ではないという。著者独自の見解があると断っているのだ。正直、ある時期からラカンフロイト本を読む気が失せ、反精神分析の本などを読み、読書法を変え、冷笑的にこれを読み出したが、なかなかどうして。ラカンの基本的な概念を複数のテーマに沿って、彼の影響を受けたり与えたりの多数の哲学者思想家たちの引用から考察まとめていく。デリダの意味合いが思いがけず理解できて驚く。実用としては相変わらず疑問に思うが、批評や哲学のツールとしてラカンは魅力的だと再確認。良書。2018/05/14
mstr_kk
10
異様な本です。ラカンの用いたいろいろな概念(といってもだいぶ偏っている)を、ほかの哲学者たちの理論(けっこう新しいものも含む)につなげていく、入門編というより「応用編」の一冊ですが、各章の記述は積み上げ式ではなく、しかも結論を出さないように(=「まだわからない」という結論を隠しながら)書かれているので、この本を読むと、わかったと思っていたラカンがわからなくなります。そういう意味で重要な書籍です。「事後性」と「反復」が非常に重視され、それらについての考察・思弁が、ボレロのように反復されます。2018/11/01
6
ラカン入門最新バージョン。アルチュセール、ベンヤミン、デリダなどを行き来しながらラカンの思想を見てゆく。斎藤や、新宮よりもよっぽどいいのではないでしょうか。これをさらに詳しくさせたのが向井雅明の『ラカン入門』なので下手にジジェクとか行くよりはこの線で読み進めて行ったほうが良い(漫画のラカン本と向井のちょうど橋渡しに)興味深いのはラカンが一時期シャルル・モーラスに傾倒していたこと、「最近のラカン研究で特に重視される概念」である「唯一の特徴」を「室内デザイン」という具体的な例で説明されているところが助かる。2017/04/01
遊動する旧石器人
0
2017年2月28日初版第1刷発行。図書館よりレンタル。フロイトと同じくいつか読むことになると思ってたラカンについて、取っ掛かりとして手にした1冊。まだアウトプットできるほどの力はないが、ラカンだけではなく、その他の哲学的人物も登場しており、関係性が分かる。自身の興味の素でもあるマルセル・モースさえ登場する。知が集約された良書。知のコレクションと言って良いならば、シニフィアンとシニフィアンを結合させる「唯一の線」を制作してくれるのが本書でもある。文化財返還問題が例として出されるが、それは解決すべき問題だ。2020/09/23