内容説明
栄光と悲惨!輝けるドイツ統一戦争から、第二次世界大戦の惨憺たる潰滅まで―ドイツ軍は何故に勝利し、何故に敗北したのか?戦後70年を経て機密解除された文書、ドイツ連邦軍事文書館や当事者の私文書など貴重な一次史料から、プロイセン・ドイツの外交、戦略、作戦、戦術を検証。戦史の常識を疑い、“神話”を剥ぎ、歴史の実態に迫る。
目次
第1章 戦史をゆがめるものたち
第2章 プロイセンの栄光―18世紀‐1917年
第3章 政治・戦争・外交。世界大戦からもう一つの世界大戦へ―1914‐1941年
第4章 人類史上、最大の戦い。独ソ戦点描―1941‐1945年
第5章 ドイツ国防軍の敗北―1945年
付章―「ある不幸な軍隊の物語」
著者等紹介
大木毅[オオキタケシ]
1961年東京生まれ。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学。DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生としてボン大学に留学。千葉大学その他の非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、国立昭和館運営専門委員等を経て、現在著述業。「赤城毅」名義で、小説も多数上梓している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
71
名著『独ソ戦』執筆以前の、主に「コマンドマガジン」というシミュレーションゲーム専門誌に寄せた小論を集めたものだが、自伝や学説の取り扱いなど、ゲーム誌らしからぬかなり正統な歴史学的アプローチを踏まえている。こうした積み重ねが『独ソ戦』を生んだのだろう。一方コラムは結構マニアックな小ネタで、こちらはこちらで面白かった。ヒトラーという人物の独り相撲的な面を感じるが、その中での各将軍たちの振る舞いも興味深い。他に何冊も姉妹書もあり、蓄積を感じるこの著者には是非体系的なドイツ軍論をモノしてもらいたい。2024/06/05
スー
18
ドイツ軍の特長である優秀な参謀と目標と手段を示して後は現場の指揮官の裁量に任せる柔軟な指揮の起源を知る事ができました。他に興味深かったのは擲弾兵と猟兵の歴史とクルスクの戦いとイタリア軍のダメッぷりでした。クルスクの戦いは今まではヒトラーのゴリ押しで計画され、新型戦車の配備の為に延期をして準備万端のソ連に突っ込み敗北と思っていましたが、マンシュタインとツァイツラーの発案で延期は部隊の疲弊の為でした。生き残った将軍達はヒトラーに罪を押っつけたようです。イタリアの工業力の貧弱さ識字率の低さに驚愕でした。2018/01/22
しめおん
8
アマチュアが思うドイツ軍像や旧来の考えに対して、最新の研究を紹介した本。そもそもドイツ軍にまつわる史料が、かなり脚色されているらしく、ヒトラーに責任を負わせ、自身らの弁護をはかるものが多かったことに驚いたし、同時に納得した。独ソ戦を中心に軍の実情が暴かれており、そもそも初期の段階でこの東部戦線の決定的な勝利が絶望的だったということがよく伝わってきた。2023/05/20
hurosinki
8
まず独ソ戦は事実上ソ連が仕掛けたとする「予防戦争テーゼ」が否定されるまでのプロセスの紹介。この流れが日本に全くと言っていいほど伝わってなかったことに著者は憂慮する。次に、人物中心にプロイセン時代から第一次世界大戦までのドイツ軍事を大掴みに振り返り(フリードリヒ大王、ブリュッヒャー、モルトケ、HLHトリオなど)、最後に第二次世界大戦のドイツ軍をトピックごとに深掘りしている。ヒトラーはなぜ米国に宣戦布告したのかが気になっていたが、既に大西洋上で米国と事実上の戦争状態に陥っており、開戦は時間の問題だったようだ。2019/08/03
Yasuhiko
5
プロイセン時代から第二次大戦までのドイツ軍の戦いを多角的に描いている。対ソ戦の敗北はヒトラーだけのせいではないという視点が新鮮だ。戦後、「すべてはヒトラーのせい」とした元将軍たちの語りが神話化された背景にも迫る。ウクライナ侵攻が続く今、ぜひ読んでほしい一冊。2025/05/06