出版社内容情報
吉本隆明によって南島は、人間の表現の「原型」、さらには、人間の家族・親族・国家の「起源」を探ることが可能な場所であった。それは同時に自らの詩人としての起源、批評家としての起源が立ち現われてくる場所でもあった。本書『全南島論』は、吉本隆明の表現の「原型」、表現の「起源」を明らかにしてくれる特権的な書物になった。一冊の書物のなかに、文字通り、一つの宇宙が封じ込められているのだ。――安藤礼二「解説」より
目次
1(南島論序説;『琉球弧の喚起力と南島論』覚書;南島論1・2)
2(島はみんな幻;母制論;起源論 ほか)
3(鬼伝承(島尾敏雄)
民話・時間・南島(大山麟五郎)
歌謡の発生をめぐって(藤井貞和) ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
13
吉本も戦中派(1924年生まれ)。戦争体験が大きく影響してる。日本とは天皇制国家のことである。政治史から入っても文学や宗教から入っても、最後は天皇に行きつく。講座派のようにこれを「封建遺制」として否定したところで、さらに日本人の意識の深層に追いやるだけ。その証拠に神話が否定された今日でも天皇に関してタブーが多くて、歴史的にどのように位置づけられるか語られない。こんな例はほかのどこの国にもない。吉本の知的探究は、天皇制に規定されるのではなく、天皇制自体を内包し規定する「日本」の歴史を探るという目的がある。2021/08/12