内容説明
ベトナム高地の森にたたずむ静かな村で幸せな日々を送る少年象使いを突然襲った戦争の嵐。家族と引き離された彼は、愛する象を連れて森をさまよう…。日系のニューベリー賞作家シンシア・カドハタが、戦争の悲劇、家族の愛、少年の成長を鮮烈に描く力作長篇。
著者等紹介
カドハタ,シンシア[カドハタ,シンシア] [Kadohata,Cynthia]
1956年シカゴ生まれの日系三世。『七つの月』(荒このみ訳、講談社)で注目を浴びる。『きらきら』(代田亜香子訳、白水社)でニューベリー賞を受賞
代田亜香子[ダイタアカコ]
神奈川県生まれ。立教大学英米文学科卒業後、会社員を経て翻訳家に
金原瑞人[カネハラミズヒト]
岡山市生まれ。法政大学教授。翻訳家。ヤングアダルト小説をはじめ、海外文学作品の紹介者として不動の人気を誇る。著書・訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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けろりん
45
ティンの国は、南と北に分かれて長い間戦っている。ティンが生まれる前からずうっと。アメリカ人がベトナム戦争と呼び、父さんがアメリカ戦争と呼ぶ戦争だ。南の高地で密林に囲まれ、象を友とし、精霊を尊ぶ山の民の穏やかな暮らしは、戦争とは無縁に思えたけれど、不穏な影は容赦なく迫り、ある日ティンの村は滅ぼされた。最年少で象使いとなり、賢く力持ちな雌象レディと共に育んでいた将来の夢を無残に打ち砕かれた怒りと悲しみ。辛くも生き残った仲間との思わぬ軋轢と孤独。暴力と憎しみの嵐に翻弄されながらも選び取ったティンの前途に光あれ。2019/05/20
みなみ
13
図書館本。主人公ティンの父親がベトナム戦争で親切なアメリカ軍に協力したら、戦後、北ベトナムから村ごと激しい報復を受けてしまう……最初は「象使いになりたいから学校なんて行きたくない」といかにも子どもらしい主人公なのだが、父の行為が村全体に与えた影響の大きさに人間関係が狂っていく。誰が悪いのか、なにが正しいのかわからない。戦争をテーマとした作品によく言われる言葉だが、戦争に巻き込まれることで素朴な人間関係が破壊されるさまは、読んでいてとても辛い。2023/05/15
ぱせり
10
むごたらしい場面がいっぱい出てきたが、それと一対になっておそろしいもの。一つも武器を使わないで人間が別のものに変貌していくこと。(ほんとうだ。ジャングルは人間を変える。戦争は人間を変える。)人びとが虐殺され、日常を奪われ憎しみに囚われていくなかで、象たちの屈託の無さが際立つ。 2014/08/28
にたいも
8
ベトナム戦争末期の1975年。米軍が撤退した南ベトナムのラーデ族の村で13歳のティンは象使いとしてのどかに暮らしていた。ある日、北ベトナム軍が村を攻撃し、ティンは象を連れてジャングルに逃れようとするが…。/米軍に協力してトラッキングなどをしていたデガ(山の人)=高地民(モンタニャール)が迫害から逃れ、米ノースカロライナ州にコミュニティを作っている。なぜデガの人々がアメリカにいるかという背景の話であり、米軍が撤退(そもそも参戦)したことで何が起こったかというベトナム戦争批判である。12歳くらいから。2023/08/15
奈良坂葵
6
ベトナム戦争の裏にはこのような象使いの少年の苦難があったのか。米軍の撤退や北ベトナムとの対立など、象には関係ないのに・・2013/09/27