内容説明
21世紀最も重要、かつ“危ない”思想家の主要著作と原文を徹底読解し、“危うく”理解され続けるキーターム「決断主義」、「敵/味方」、「例外状態」などを、その思想の背景にある彼が生きた時代と独特な世界観を探りながら、丁寧に解説。
目次
第1回 『政治的ロマン主義』1―秩序思考
第2回 『政治的ロマン主義』2―政治の本質とは何か?
第3回 『政治神学』1―主権者、法‐秩序と例外状態
第4回 『政治神学』2―誰が法を作りだすのか?あるいは「最後の審判」
第5回 『政治的なものの概念』1―「友 Freund/敵 Feind」、そして他者
第6回 『政治的なものの概念』2―政治を決めるのは、誰か?
補講 『陸と海と‐世界史的一考察』―空間革命と「人間存在 menschlicheExistenz」
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年広島生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。「ポストモダン」が流行の八〇年代に学生時代をすごす。政治思想、現代ドイツ思想、社会哲学、基礎法学などの“マトモ”な学問から、テレビ、映画、アニメ、はたまた松本清張などの“俗っポイもの”まで幅広くかつ真剣に議論を展開し、また医療問題にも取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
27
ドイツ法学者カール・シュミットの著作を丁寧に追い、その思想を解説する。途中にあったように友敵理論と決断主義が現代を考える上で得るものがあった。レトリックと読者に要求する教養の高さから必要以上に誤解され、その難解さとナチスへの加担がより怪しげな思想家にしている。決断こそが政治の本義であり、自由主義は決断から距離を取るので頼りにならないという。シュミットの反自由主義・反議会主義の批判は今も一定の意義を持つ。2016/08/15
白義
15
通常、政治の世界とはある程度安定した枠組みの中でその主張を突き合わせていくものだが、時にはそれでは済まない「例外状態」がある。シュミットはそうした例外状態における決断にとりつかれ、そこに政治や国家の本質を求めた思想家。法学の枠組みから離れ、既成概念の破壊を通して荒々しい政治の根底を明らかにする、ポストモダン左派を思わせる独特の難解な文章はなかなか読みにくいが、本書ではそこに明快な解説、脚注がつけられ、代表作を中心にかなりシュミットの世界観が分かりやすく伝わるようになっている2014/11/20
さえきかずひこ
13
シュミットの著作を複数読み解き、その巨大な知性を概観する一冊。とくに興味深かったのは、第1〜2回『政治的ロマン主義』における彼のロマン主義批判の中で、シュミット本人にもロマン主義的な部分があるとする著者の指摘。第5〜6回『政治的なものの概念』では、政治的politisch とは何なのか、意味論的な探究が行われ、その友/敵理論からは彼の性悪説的人間観が窺える。補講では『陸と海と』『大地のノモス』の二作を通し、シュミットの世界(史)観を探る。濃密かつ長い。法哲学について基礎知識があると理解が増すに違いない。2018/06/07
みみみんみみすてぃ
7
★五つ。 正確には全部読んでおらず、第二講までの「政治的ロマン主義」まででかなり助かっているのですが……「政治的ロマン主義」がそもそも文学の関係で論じられることが多い理由が分かってまずよかったです(笑) 仲正先生によると(政治的)ロマンティシズムは、過去の地点や秩序に立着する保守派とは違って、宙づり的立場つまり現時点からも遊離して「何事も曖昧に」するという立ち位置に立つ者のことだとし、それを激しく非難するのがシュミットの立場らしい。だから、彼らが主張するロマンも「仮構」の姿であり、実在的な価値を持たない。2016/03/05
またの名
6
「現代思想をやってる奴は軽薄でやる気がない!」と憤る保守や年配の論客とか「引用がいい加減だ!」と批判してくる自称在野知識人とかいったあまりエレガントではない例や喩えを巧みに使う仲正節で、危険な思想家の主著も見事に説明。友/敵理論の危うさが、一方でケルゼンら新カント派等の平和主義的リベラルの盲点を突く政治神学と決断の概念のために煙たがられ、他方で対極にあるはずのマルクス主義者や後世のポストモダニストを友であるかのように惹きつける理由や文脈を、豊富な語学的知識を交えて語る講義に興奮。ロマン主義論の解説も適役。2015/07/12